第9話 あおいひとみがみつめるもの

『はじまりのくに』のおしろの いちばんたかいところにあるへやから おうさまがそとをながめています。


そとでは くろいひかりと しろいひかりが ぶつかりあっているところでした。


そこでたたかっているのが、ゆうしゃとまおうであることを おうさまは しっています。


おうさまのせなかに こえがかかりました。


しろのきしと くろのきしです。


おうさまの めいれいを なしとげられずに、ゆうしゃをたおすことも まおうをたおすこともできませんでした。もうしわけありません。


ふたりは おうさまのかおをみることもできなくて、ゆかにむけて はなしをしているみたいに あたまをふかくさげています。


おうさまは ふたりにふりむいて こたえました。


よい、ふたりともよくやってくれた。このけっかになることは わかっていたからな。


おうさまは、ふたりのきしを おこったりしませんでした。


だけど、ふたりのきしには なんでおうさまが しっぱいすると わかっているめいれいをしたのかが わかりません。


おうさまは ふたりのきしが こまったかおをしているのがみえたので、ことばをつけくわえます。


ゆうしゃは あのままでは よくなかった。


ひくく、よくとおるこえで おうさまは はなします。


きかいのように、まぞくをころしつくすゆうしゃでは よくなかった。きかいにすべてをあずけて、そのまま すくわれるようなせかいに みらいはない。


おうさまとしては ていねいに はなしたつもりですが、きいている ふたりのきしには ちんぷんかんぷんです。


だけど、おうさまは つづけます。


まおうが あのままでも よくなかった。


じぶんが なにものであるかもわすれ、あらゆるものから にげつづけるまおうでは よくなかった。


『おう』には せきにんと ぎむがある。たとえ せいかいをえらびつづけることができなくても、くにのすべてとむきあいつづける せきむがある。


おうさまは、いげんをもって ふたりのきしに はなしました。


ですが、ふたりのきしには やっぱりわからないところがあります。


おうさま。ゆうしゃが かわるひつようがあったことはわかりました。しかし、まおうは そのままで よかったのではないでしょうか?


きしは もっともなことを いいました。


まぞくのおうさまが りっぱになっては、にんげんたちが こまります。


それをきいて、おうさまは たしなめるように ふたりにいいます。


おまえたち。だれかがいなくなってくれれば じぶんたちがしあわせになる などとおもってはいけない。せかいは、そのようにかんたんには できていない。


そういって、おうさまは まどのそとを もういちどみます。


しろとくろのひかりの ぶつかりあいは おわり、きれいなあおぞらが ひろがっていました。


ゆうしゃとまおうの けっちゃくがついたのでしょう。


おしろからでは どちらがかったのか わかりませんが、おうさまには なんとなく どんなけっちゃくがついたのか わかっていました。


ゆうしゃとまおう どちらが きえたとしても、てに はいらなかったしあわせが あることを わかっていました。


『はじまりのくに』のおうさまは あおいひとみで あおぞらのずっとさきを みつめています。


いつか、ゆうしゃがすべてをおわらせるために、このおしろにもどってくるそのひを みつめていました。 

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