第7話 ものくろ~むのひかり

まおうは まけんに ちからをこめます。


ぜんしんぜんれい、じぶんのいのちとか、これまでのじんせいとか、かんがえられるもの すべてを まけんにこめました。


まけんは くろいひかりを はなって、まわりのせかいを くろくそめていきます。


ゆうしゃも せいけんに ちからをこめました。


ぜんしんぜんれい、じぶんのいのちとか、じぶんのじんせいとかは いつもぜんぶつぎこんでいたので、あとはすこしだけ めのまえのかなしそうな まおうをとめてあげたいきもちを つぎたして、せいけんをつよくにぎります。


せいけんも しろいひかりを はなって、まわりのせかいを しろくそめていきます。


くろとしろ、ふたつのひかりがひろがって ふれあおうとしたしゅんかん、ふたりはおなじように けんをつよくふりぬきます。


くろのひかりと しろのひかりが、おたがいを ひていするちからとなって ときはなたれました。


ふたつのひかりは、ゆうしゃとまおうの ちょうどまんなかで きっこうしています。


しろとくろのひかりが まざりあってまきちらされ、まわりが ものくろ~むのせかいに かわっていきました。


まおうは さけびます。


おまえだって いつかきづく。だれかのため、みんなのために がんばりつづけても、ほんとうにほしいものは てにはいらないってことに。


ふういんで しなないはずのからだが しにそうになるくらい まけんにちからをそそぎこんで、ずっと さけびつづけます。


おれは、だめだった。ずっとがんばりつづけたのに、みんなのためにがんばりつづけたのに、ほんとうにほしい ことばは もらえなかった。


まおうは いまにもなきだしそうな こどものように こころのぜんぶを はきだしました。


いっしょうけんめいに がんばっただけ、あとで つらいおもいをする。そんなおもいをするくらいなら、さっさと そんなおもたいものは なげだして じぶんのために いきればいい!


ゆうしゃは、まけんのくろいひかりを ひっしにおしかえしながら、まおうのことばを しずかなこころできいていました。


なんて、かなしい ことばでしょうか。


なんて、はげしい おもいでしょうか。


たくさんの こうかいといっしょに、ゆうしゃへと たしかにつたわったことがあります。


────────ずっと、がんばってきたんですね。


ゆうしゃの しずかなこえ。だけどそれは きちんと まおうのみみにとどきます。


わたしの なんばい、なんじゅうばいのじかんを、ずっとだれかのために、みんなのために がんばりつづけてきたんですね。


ゆうしゃの こえには、たしかな そんけいのひびきがありました。


すごいです、えらいです。わたしなんかの ずっとずっとさきに、あなたはいるんですね。


うその つけないゆうしゃの こころからのこえ。


なきだしそうだった まおうの めに、なみだがうかびます。


まおうは、ほんとうにほしかったことばを いま もらえました。


ゆうしゃは まだまだ ことばをとめません。


わたしは あなたみたいになりたい。


ゆうしゃが、まおうへと おくります。


みんなのために がんばりつづけたことを こうかいできるくらい、ながいながい じかんを だれかのために ささげつづけた、あなたみたいに なりたいです。


せいいっぱいのこころを、せいいっぱいのことばにこめて まおうにおくりました。


まおうは、すこしだけ ことばにつまり、つぶやきました。


ばか、だな。ほんとうに、しあわせな やつだ。


まけんを にぎるちからが すこしゆるんでいました。


まけんにこめた まおうの これまでのじんせいが、すこし かるくなったせいでしょう。


まけんのちからがよわまり、まおうの めのまえには しろいひかりが せまっていました。


まおうは しずかに めをとじます。


まおうは ゆうしゃよりも ずっととしうえだったので、かのじょのまっすぐな こころが とてもまぶしかったのです。


めをとじても、まおうのむねを やきこがすくらいに。


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