第14話 エピローグ

 寝室から、衣擦れと男女の荒い吐息が洩れる。

 この日も、シーラはレオポールの家に行き、一夜を過ごしていた。


 最近、二人は結婚を前提に付き合い始めた。

 息子のヨエルにも、レオポールのことは伝えてある。


 両親の離婚に、ヨエルの反応は実にあっさりしたものだった。

 『そうなんだ。 で、レオポール先生とはいつ再婚するの?』と、二言目にはレオポールの話題が出るほど。

 ヨエルはレオポールの気持ちをすでに知っていて、彼が新しい父親になるのなら大歓迎とまで言った。

 元夫とヨエルの関係は、シーラの目から見れば良好に映った。実の父親がいなくなり、ヨエルはさぞや悲しがるだろうと思っていたのに。

 ヨエルの反応にレオポールは『大人ぶりたい年頃なのだろう』と言った。

 レオポールはヨエルに対し、父親ぶらず、今までどおり接すると言ってくれた。

 彼は自分にはもったいない人だと、シーラはつくづく思う。


「シーラ、愛してるよ」


 ベッドの上でも、レオポールは何度も愛の言葉を紡いでくれる。

 シーラも、彼のことをすっかり愛していた。


「私もよ、レオポール」


 元夫とは二十年も連れ添っていたのに、と思わないことはない。だが、レオポールの愛に応えたいと思ってしまったのだ。

 お互いにすぐにでも夫婦になりたい気持ちはあったが、世間体がある。

 一年後に籍を入れようと約束していた。



 ……だが、実際には籍を入れる予定の日よりも一ヶ月も前倒しして婚姻を結ぶこととなった。

 シーラが、レオポールの子を孕ったのだ。

 避妊には充分気をつけていたつもりだったが、頻繁に身体を重ね過ぎてしまったのかもしれない。

 シーラは戸惑ったが、レオポールは涙を流すほどこのの妊娠を喜んだ。そして、きょうだいを欲しがっていたヨエルも。

 入籍から七ヶ月後、元気な女の子が産まれた。

 レオポールもヨエルも、小さな天使にめろめろになっている。

 もちろん、シーラも。


 シーラは新しい家族に恵まれ、今も幸せに暮らしている。


<完>


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最近、夫の様子がちょっとおかしい 野地マルテ @nojimaru_tin

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