第12話 『白髪』


 若白髪わかしらががチラホラ混ざるようになりました。

 若白髪です。

 まだ三十代。普通の白髪ではなく、若白髪と言い張ります。



 個人差もあるのでしょうけど。

 白い毛って、黒髪と毛質が違います。

 黒髪の流れに添わないというか、変に跳ねたり飛び出したり。

 ただでさえ黒い髪の中で白毛は目立つのに。気になって仕方ないんですよね。

 抜くのは良くないと聞きますが、いつも飛び出している1本だけ、どうしても手に負えず。

 洗面所で鏡を見ながら、抜いたんです。


『ギャアッ!』


 突然の叫び声でした。

 白髪の抜けた辺りから声が聞こえたのです。

 思わず首をすぼめて、真上に目を向けました。

 もちろん頭の上には何もいません。

 鏡にも、自分以外に映る者は居ないのです。


 抜いた白髪の、悲鳴のように聞こえました。

 髪を抜く時の効果音って、プチッという感じですよね。

 白髪を抜いてはいけないのって、悲鳴を上げるから……なんて理由ではありませんよね?


 それ以来、若白髪を抜く事が出来なくなりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る