第4話 『アンケート』
アンケートモニターはノルマや締切りなどの制約が少なく、やりたい時にだけ参加出来るものが多いです。
個々のアンケートに締切り日時や必要回収件数はあるものの、その時に出来なければスルーして良し。
パソコンやスマートフォン、郵送アンケートなど対応媒体も様々です。
当然、お小遣い稼ぎや副業もどきとして人気なので、様々なアンケートサイトが存在します。
その中で私は、十年近く。自分なりに安心できる、国内企業が運営するアンケートサイトをいくつか活用していました。
まぁ、在宅ワークも難しい引きこもりの私でも、アンケートモニターは手を出しやすい収入源なのです。
最近、アンケート数の少なさから、あまり使わなくなっていたサイトから、久々にアンケートのお知らせが届きました。
たまにはやってみるかと、パソコンからアクセスすると、すぐにアンケート画面が開かれました。
記憶していた回答画面と少し違っていたものの、久々なのでリニューアルしたのだろうと。
アンケートタイトルは、
『引きこもりについて』
というもの。
自分にピッタリ。なんて思いましたね。
でも、質問内容が妙だったんです。
『いま、死にたいですか』
『いまではなくとも、自ら命を絶ちたいですか』
『死ぬとしたら気を付けたい事はありますか』
『希望の死に方を自由に記入してください』
どこのサイトでも、センシティブな内容の場合、初めに質問内容に対する注意書きがあるものです。
このアンケートでは、そういった回答者への配慮はありませんでした。
悪質な内容と、コンピュータウイルスという可能性も恐くなり、私はすぐにアンケート画面を閉じました。
一度ブラウザを閉じ、セキュリティソフトが有効な状態になっている事を確認。
インターネットを開き直し、恐るおそる、例のアンケートサイトを開いてみました。
記憶していた通りの、明るい色合いのトップ画面です。
個人ページへ進むにはパスワードの入力が必要……。
先ほどは、パスワード入力画面が飛ばされていました。
アンケート一覧に『引きこもり』という文字は見当たらず、回答済み一覧も空白になっていました。
もう一度トップ画面を見ると、前回のログインは去年の日付になっています。
どうやら、よく似た偽物だったようです。
そんな事があってから、しばらく。
例のアンケートサイトで、悪質な質問に対する注意喚起のお知らせなどを探していますが、そのような話は見当たりません。
サイトからの情報漏洩という可能性も、今のところは無さそうです。
パソコンにインストールしているセキュリティソフトでも、異常は検出されていませんでした。
悪質な悪戯だとしても、何の意味があったのか。
一緒に、あの世へ逝く者を探す幽霊の仕業とでも思えた方が、人為的な悪質行為よりもマシな気がしてしまう出来事でした。
まさか、それが目的とか……。
いえ、考え過ぎですよね。
※ 死や命を絶つという表現がありますが、それらの行為を容認・推奨するものではありません。
※これはフィクションであり、実在のサイトや団体とは一切関係ありません。
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