第3章 構築された世界
第12話 千雪と歩む
★★ パラレルワールドの世界 ★★
話は,半年前に遡る,,,と説明したほうがいいだろう,,,,
ー ルベット夫人の部屋 ー
ルベット夫人は,千雪から昨晩と今朝の2回,性交渉のあったことを知った。もっとも,2回目は未遂なのだが。
それを聞いて,怒り狂ったルベット夫人は,リスベルに,今後も千雪を抱きたいなら,この屋敷から出ていくこと,もし,このまま屋敷に留まりたいのなら,紳士として振舞い,千雪を抱くことを諦めることの2択を迫ったのだ。
そして,パラレルワールドを創り,リスベルは,この世界に出現した。
『ふふふ。パラレルワールドに来たか。これで,いくらでも,千雪を抱ける』
リスベルは,内心,最高に嬉しかった。これから,いくらでも千雪を抱けるのだ。その期待に胸がいっぱいだ。
このパラレルワールドの世界で,リスベルが選択したのは,もちろん,千雪との逃避行だった。
リスベルは,1時間,頭を冷やす時間を与えられた。
そして,その回答を持って,ルベット夫人の部屋に来た。
リスベル「お母様。1時間,頭を冷やして考えました。その結果,私は,最後まで,千雪さんに対して,責任を持ちたいと思います」
ルベット夫人「それは,どういう意味なの?」
リスベル「はい,千雪さんと一緒に行動します。この屋敷から出ていきます」
この話を聞いて,ルベット夫人は,すでに顔が赤いのだが,ますます赤くなって,両手を握りしめた。
ルベット夫人「リスベルさん! なんですって??私の聞き間違いかしら?もう一度,言いなさい」
リスベル「はい,もう一度言います。私は,千雪さんと一緒に行動します。この屋敷から出ていきます!」
ルベット夫人は,わなわなと体を震えた。
ルベット夫人「リスベルさん!あなた!あなた!何を言ってのかわかっているの?あなたは,この南東領主の跡取りとなるのですよ!それを捨てるのですか?そんなに,そんなに,千雪さんを抱きたいのですか!!
それに,リスベルさん!あなたは,強制的に千雪さんを抱くのでしょう。そんなことしたら,千雪さんに絶対に恨まれることになるのよ。半年後に,契約が切れたら,あなた,千雪さんに報復されるかもしれないのよ!!」
ルベット夫人は,どうやったらリスベルの愚かな決心を覆せるのか,分からなかった。ただ,この怒りのまま,言葉を続けた。
ルベット夫人「私が千雪さんだったら,絶対にリスベルさんを殺すわ。そして,リスベルさんの家族もね。つまり,リスベルさんは,私やお父様さえも子供は産む契約だけど,子供を殺さない,という契約内容はないから,子供さえも,生まれ次第殺すかもしれないのよ!
リスベルさんの,千雪さんを抱きたいという,その強制的な性欲が,半年後に,リスベルさんと,その家族,そして子供までもが,この世から消えるかもしれないのよ!!!
性奴隷という,危険きわまりない契約をするんだったら,契約が切れた後のことまでしっかりと考えなさい!
復讐心に燃えた千雪さんが,S級魔法士が復讐しにくるのよ!その対応にどれだけの労力が必要となると思うのよ!
千雪さんは半年でゼロからS級レベルになったのよ!!
あと半年たったら,どうなると思うの?SS級どころから,この世に存在しない,SSS級,か,SSSS級になっているかもしれないわ!!そんな化け物に,どうやってわれわれが対抗できるのよ!!
あーーーーー!!もーーーーー!!
気が変になりそうだわ!!!!」
ルベット夫人は,興奮しすぎてしまって,ひきつけを起こしそうだった。
呼吸をなんとか整えて,ルベット夫人は怒りをリスベルにぶつけた。
ルベット夫人「リスベルさん!あなた,周りからは,勉強方面では天才だって,これまでちやほやされていたでしょうけど,どこが,天才だっていうのよ!!
リスベルさんはバカよ!!アホよ。この魔界随一のオタンコナスだわ!!
一時の性欲のために,私たち家族が崩壊してしうわ。エルザやフレールからさっき聞いたんだけど,その性交渉って,わずか1分だったそうね。その1分で,この屋敷の住人の命が消えてしまうのよ!!
もう考えただけで,気が狂いそうだわ!!」
ルベット夫人は,呼吸を整えて,再び次から次えと込み上げてくる怒りをリスベルにぶつけた。
ルベット夫人「どうしても千雪さんを連れて出ていくというなら,千雪さんに,われわれへの攻撃,不利益を起こす行動を終生行わない,またほかの人に直接的・間接的に依頼しない,という,がんじがらめの契約をしてからにしなさい!もっとも,そんな契約を,千雪さんがするとは思えないけど。リスベルさん,わかりましたか!!」
リスベルは,『しまった』と思った。なんと,このパラレルワールドの世界なら,好き勝手に,自由に千雪を抱けると思ったのに,これでは,まったく身動きができなくなってしまう。
リスベルは,とりあえず,千雪に聞いてみた。
リスベル「千雪さん。お母様の言ったような契約をしてくれますか?」
千雪は,ニヤッと微笑んで答えた。
千雪「いやです」
ルベット夫人が予想した通りの答えが返ってきた。リスベルにとっては,袋小路に迷い込んでしまったと感じた。出口を見いだせなくなった。
『どうする?このままでは,元の世界と同じく,千雪を抱くこともできなくなってしまう。せっかくこの世界を作ったのに,,,』と,心の中でリスベルは自分の境遇を恨んだ。
ルベット夫人が,どんなに喚き倒そうが,リスベルとしては,このパラレルワールドを作った以上,千雪を抱かないという選択枝は絶対にあり得ない。たとえ,半年後に,自分の家族が皆殺しにあったとしてもだ。
リスベルは,腹をくくった。リスベルは,『半年間,千雪を徹底的に奴隷として扱い倒そう。半年後に,千雪に殺されてもいい。もし家族全員が殺されたら,あの世で,私を恨んでもらおう。そのために,このパラレルワールドを創ったのだから,,,』と考えた。
もう,リスベルに迷いはない。ルベット夫人が何を喚こうが,もう関係ない。リスベルの心は平静を取り戻した。
リスベル「お母様。お父様。エルザ,フレール,そしてレボン。私の考えを言います」
リスベルは,一呼吸置いてから話し始めた。
リスベル「私の結論は変わりません。やはり,千雪を連れて出ていきます。
お母様の言うように,契約終了後は,千雪は,私に対して復讐するかもしれません。その可能性は高いでしょう。でも,私の勝手な考えですが,その復讐が私の家族に及ぶ可能性は低いと考えます。
千雪,いや千雪さんに,私はともかく,家族への復讐心は生じさせないように,できだけ千雪さんの,人としての尊厳を大事にして,付き合っていきたいと考えています。
お母様。お父様。どうか,親不孝の私をお許しください。もし,千雪さんが,私を殺し,さらに私の家族を殺すこがあったら,その場合,生まれてくる子供もいずれ殺されるでしょう。
その時は,死後の地獄の世界で,私を罵倒して,火炎地獄にでも突き落としてください。ほんとうに,親不孝きまわりない私をお許しください。
そして,いままで,ここまで育てていただいた御恩に感謝申し上げます。もしかしたら,われわれは,あと半年の命かもしれません。でも,もし,千雪さんが家族には手を出さなかったら,その時は,私の分までどうか長生きしてください」
ルベット夫人の,震えが止まった体が,再び震えだした。
パチーーン!!
ルベット夫人は,思いっきり,リスベルの顔をひっぱたいた。
リスベルの行動が,この南東領域の領主の血族を根絶やしにしてしまうかもしれないのだ。一族を守るため,今ここで,リスベルを殺すという判断を,ルベット夫人は,考えざるを得ないのかもしれない。
ベルダン領主は,妻の考えがすぐにわかった。このままの状況では,妻はリスベルを殺すという結論を下すに違いない。リスベルは,この家族の中では,最も弱い戦闘力だ。妻のルベット夫人がリスベルを殺すことは容易なことだ。
ベルダン領主「ルベット,落ち着きなさい!もう少し考えよう。リスベル!お前の考えは変わらないのか?」
リスベル「はい,かわりません!」
ベルダン領主「せめて,3日間,出発を延ばしてくれないか?それは可能か?」
リスベル「それは,かまいません」
ベルダン領主「そうか。その間,家から一歩も出ないことを約束するか?」
リスベル「それくらいなら。まあ,いいですけど」
ベルダン「では,宣誓魔法陣による契約をしてくれ。出発は3日間延期すること,その間家から一歩も出ないこと。お互い,殺傷ざたは決してしないこと」
リスベルは,この契約の裏にある背景をうすうす理解した。母は私を殺す気なのだ。そして,それを回避する方法を父は,この3日間で考えなければならない。
リスベル「では,今から千雪さんを私のもとで働くことにさせます。同時に,護衛の2名,エルザやフレールには,申し訳ないのですが,護衛の業務を終えてもらいます。わずか1ヵ月でしたが,当時の約束通り,最低保証金である3ヵ月分の給金は出します。
そこまでは私のほうで対応します。その後は,お父様に内政業務の引継ぎをさせてください。1日程度,必要です。
ーーー
リスベル「これからの3日間,この家にいます。私の護衛は千雪さん一名とします。千雪さんにも給金を出したいのですが,この事態を引き起こした責任として,私個人のお金をからだします。
ただ,限られたお金しかないので,仕事を見つけて私の稼いだお金から,千雪さんに払うことになるかもしれません。
可能性は低いですが,護衛が千雪さん一人なので,私がこの半年の間に,だれかに襲われて殺されたら,決して千雪さんを責めないでください。早めに千雪さんに復讐されて殺されたと思って諦めてください。
ベルダン領主「内政の引継ぎは大丈夫だ。リスベルよ。出発を3日後に延期したことによる契約を行うことにしよう」
リスベル「わかりました」
ベルダン領主とリスベルは,宣誓魔法陣による契約を行った。親子でこのような契約を行うとは前代未聞だ。
ベルダン領主「千雪さん。この3日間の延期をもらったのは,私と千雪さんとで宣誓魔法陣による契約をするためだ。
それは,千雪さんが,もし,われわれ家族に復讐する気になっても,最低でも誰か一人,血族を残してほしいからだ。
私の代で,血を絶やすのは,あまりに忍びない。私の命,妻の命はどうでもいい。リスベルは,もうこいつは,遅かれ早かれあんたか,盗賊に殺される。だが,王都にいる長男は生かしてほしい。もしそれがだめなら,もし,千雪さんが妊娠していたら,その子供だけても,その命を生かしてほしい。
どうか,この3日間で考えてほしい。そして,どんな復讐心が芽生えたとしても,せめて,長男か,これから生まれてくる子供のどちらかだけは生き残らせてほしい」
ルベット夫人「どんな状況になっても,血族1人でも生き残れるなら,リスベルさんをすぐに殺すことはやめにしましょう。
でも,リスベルさん。その後は分からないわよ。リスベルさんが早く死ねば死ぬほど,千雪さんは自由になるのよ。その分,復讐心も少なくなるわ。リスベルさんを早く確実に殺す方法でも考えておくわ」
千雪「ベルダン様,ルベット様。リスベル様と契約した時は,特に復讐とかは,思っておりませんでした。今後,どのような感情が生じるのか,まったくわかりまん。
極端な話ですが,この魔界すべてを壊してやりたいという気になるかもしれません。リスベル様との契約とは関係ないのですが,私の将来の敵になるのは,そのような次元になる可能性があるのです。
そのような状況になった場合は,血族一人を残す,という契約はできません。ですがリスベル様への復讐心が芽生えた場合に,せめてだれか一人血族を残す,ということについては,口約束ですが,いまでも同意できます。
ただし,復讐心以外の感情で,殺す場合が生じる可能性があります。その場合はご容赦ください。現時点で,ベルダン様の提案には同意することはできません」
ベルダン領主「なるほど,よくわかった。では,宣誓魔法陣でなくてかまわないから,現時点での千雪さんの気持ちを,紙に書いてしてくれないか。
その手書きの文章では,なんら拘束力はないが,その証があることで,妻もすぐリスベルを殺そうという気持ちが和らぐかもしれん」
千雪「拘束力がなければ,なんら問題ありません」
ベルダン領主「そうか,大変ありがたい。文章の内容は私が準備しよう。千雪さんが,もし,その内容で問題なければ,サインするだけでいい」
ベルダン領主は,ルベット夫人に向かって言った。
ベルダン領主「ルベットよ。なんとか,この条件で,リスベルを解放してくれないか?」
ルベット夫人「今は興奮していますので,明日,またお話ししましょう。ここは,私の部屋です。皆さん,今日はここまでとします。お引き取りください」
リスベル「千雪さん,エルザ,フレール,食堂に来てください。私から話があります」
ー 食堂 ー
食堂に,エルザとフレール,そして千雪が集まった。リスベルは,ゆっくりと話始めた。
リスベル「エルザ,フレール,もう状況はわかったと思う。千雪が昨日の夜,突然,私の前に現れた。千雪の美しい体を見て,自分を欲望を抑えることができなかった。
母に,今後いっさい千雪さんの体に触れてはいけないという命令に,私は逆らった。その結果がこれだ。せいぜい,勘当くらいで終わると思っていたが,甘かった。
母がほんとうに私を殺しにくるのか,暗殺者を依頼してくるのか分からんが,まさかこんな事態になるとは予想しなかった。
これ以上,言うと愚痴になるな。エルザ,フレール,この時点をもって解任とする。保証金は今からもってくる。ちょっと待ってくれ」
リスベルは席をはずした。
エルザ「あーあ,たったの1ヵ月か? 給料がよくて,こんな楽な仕事なかったな。また,職探しか,いやんなるな」
フレール「そうよ。2周間前なら,いくらでも職があったのよ。王都で,S級冒険者を大量に集めているんですって。それもすごくいい給与で。
倒す相手は,たったの2人ですって。楽勝な仕事だって,私の友人が誘ってきたわ。2週間前くらいにね。
こんな結果になるんだったら,さっさとここを辞めて,その誘いに乗るんだったわ。残念だわ」
千雪は,クスっと笑った。
エルザ「千雪!あんた,何笑ってんのよ。リスベルさんがこんな目にあったのも,あんたがあんな奴隷契約を,ほいほいと契約したからじゃないの!その結果,何??私たちまで,翌日に,即解雇よ。わかってんの?あなた!!」
フレール「そうよ,そうよ!精神的,経済的損害を弁償してほしいわね。わたしたちの前で卑猥な行為見せつけて。それで済むと思っているの??」
千雪「確かにそうかもしれません。ごめんなさい」
千雪は,少し頭を下げた。
エルザは,千雪が下出に出たので,強気になった。
エルザ「ごめんねで済んだら,自衛団なんかいらないわよ。賠償金を払うか,半年,リスベルさんと同じように,わたしたちの元で,下僕として働きなさい。少なくとも奴隷にはしないわ。あまり危険なこともしなくていいわ。毎日料理作るとか,家事とかでいいわ」
フレール「それ,いいアイデアね。千雪,どうせお金なんかないんでしょ?それに,今のリスベルさんは,貧乏人よ。半年後,リスベルさんとの契約が終わったら,私たちのところにきて下僕として働きなさい。
エルザも,私の家で間借する予定になったから,ちょうどいいわ。私たちに奉仕しなさい。
別に,魔法陣の宣誓契約までしなくていいわ。あなたは,リスベルさんとの奴隷契約で,宣誓魔法陣の契約にはこりごりでしょう。紙の契約書でいいからサインしてちょうだい。
あなたのその素直で正直な性格なら,紙の契約書でもちゃんと約束守ってくれるって信じるわ。
千雪「わかりました。紙の契約書ならサインします。そして,契約が履行できる条件であれば,かならず約束は守ります。それで,今回の件は,許してください。
エルザ「え?ほんとにいいの。それはラッキー。じゃあ,契約書の文案を作るわね」
エルザとフレールは,二人で協議して契約書を作成した。千雪はそれを見て納得し,サインした。この時,千雪は内心確信していた。このことは,逆に千雪にとってラッキーなのことだと。
リスベルが戻ってきて,3か月分の給金をエルザとフレールに渡した。
リスベル「これで,正式にエルザとフレールを解任する。今からは,エルザさん,フレールさんと呼ばないといけないかな?では,もう引き取ってもらって結構だ。
エルザ「リスベルさん。短い間でしたけど,楽しく仕事させていただきました。これまでありがとうございました。
私は,今後,実は,たったいま決めたばっかりですが,フレールの家に間借りして,そこの町で冒険者としてがんばんていきます。これから,リスベルさんは千雪と一緒に,棘の道を歩むようですけど,くじけずにがんばってください。また,半年後,千雪に殺されないようにしてくださいね」
フレール「リスベルさん,私,この1ヵ月で,リスベルさんに少し情が移ってしまいました。少し前に,ここよりも条件のいい仕事があったのですが,リスベルさんの傍で働くほうがいいと考えて,今日まできました。でもこんなに早く,こんな形で解雇されるとは思ってもみませんでした。(半泣きした)
すいません。どうも,わたしは,エルザのように,ドライな性格ではないようです。でもしょうがないですね。リスベルさん,どうかお元気で。ルベット夫人からも千雪からも,殺されないことを祈っています。では,これで,これで失礼します」
フレールは,その場で,魔法石を使って長距離転移魔法陣を構築した。エルザとフレールは,フレールの実家へと転移した。
リスベル「まずは一件片付いた。次は,お父様への引継ぎの整理だな。それと,自分の荷物をどうやって持つ出すかだ。亜空間領域魔法陣の仕方は知っているが,俺には魔力がほとんどない。千雪さんのほうで,亜空間領域魔法陣を構築してくれないか。その方法は,私が教えることはできる」
千雪「亜空間領域魔法陣は,すでに構築しています。リスベル様が持ち出したい荷物がれば,言ってください。私の空間に収納します。でも,あまり大きい荷物はだめです。せいぜい,全体で2m角くらいしか入りません」
千雪は,控えめに言った。
リスベル「それは助かる。ぎりぎりだけどなんとか,その大きさにおさめてみる。自分の大事な魔法書,これまでの研究ノート,月本語の漫画本,小説,辞典などの書籍類と,着替え,靴,お金くらいだ。
さて,千雪さん,急にこんな展開になって申し訳ない。これからの半年間,いや途中で母に殺されるかもしれないけど,3日後には,ここからでることになる。
知っての通り,私はほとんど自分のお金を持っていない。だけど,母から目の届かない場所で,名前を変えて,金を稼ぐ必要がでてきた。
千雪さん,あなたは,母が言うように,すでに妊娠している可能性があるけど,無理しない程度でいいので,金を稼ぐ手伝いをしてもらえるとうれしい」
千雪「リスベルさん。お母様に脅されて,急に,私に丁寧な言葉遣いになりましたね。言葉使いが変わったくらいでは,私の気持ちに変化はありません。
リスベルさんの行動がすべてです。すでに昨晩から,あのような行動をしたのですから,今更,丁寧語になったくらいで,気持ちが変わるものではありません」
リスベル「確かに,千雪さんの言う通りだ。わかった。では,昨晩からと同じように,下僕として扱う」
リスベルは,数回,深呼吸をした。そして,気持ちの整理をした。それと同時に,覚悟を決めた。
リスベル「半年後に,千雪に殺されるなら本望だ。その覚悟は,たった今できた。千雪!では,私の寝室に戻って,私を待て!私は,自分の部屋で荷物の整理をしている」
千雪「はい,リスベルさん。了解しました」
千雪は,寝室でリスベルを待った。15分後,リスベルが寝室に来た。
リスベル「荷物の整理って,大変だな。千雪,裸になれ。お前を抱く」
千雪は,裸になった。千雪のおっぱいは,つい先程まではBカップだった。なのに,今はなぜかDカップになっていた。お腹もちょっとだけ膨らんでいるようだ。
リスベルは,千雪の裸を見た。今日の朝までは,美しいBカップの美乳だったのに,なんで今は,Dカップの巨乳なんだ?と自分の目を疑った。
だが,リスベルの,その『疑い』は一瞬で消失した。千雪はもともとDカップの巨乳だったんだと自然に思ってしまった。
リスベルは,千雪の胸に触った。その時,千雪は,無意識に,リスベルに対して精神支配して,夢の中に彼を追いやってしまった。
千雪は,『あれ? わたし,いつの間に,精神支配ができるようになったの??それに,この無意識の行動は??』
千雪は,自分の身に何が起きているのか,よく理解できなかった。
夢の中の逢瀬が終わって目覚めたリスベルは,満足そうな顔をして,また自分の荷物整理を再開した。
その日は,リスベルは3度も夢の中に引きずり込まれた。
リスベルは,ベルダン領主との引継ぎの打ち合わせを1時間しては1時間休憩,というパターンを何度か繰りかえした。途中,ベルダン領主に別の用事ができたため,引継ぎ作業は,翌日に持ち越しとなった。
リスベルは,寝室にいる間は千雪に夢の中に引きずり込まれた。ただ,何度もリスベルに精神支配をして気がついたことは,精神支配するたびに,リスベルに対して,効きが悪くなっていくことだ。
今では,SS級レベルの霊力で,かつ,胸に触らせて20秒もかかってやっと,精神支配ができる感じだ。このままの調子でいくと,1,2週間もしないうちに,精神支配が効かなくなってしまう恐れがでてきた。
千雪は,ともかくも,徹底して,自分の霊力レベルを引き上げる修練を続ける必要性を強く感じた。
千雪の気持ちに整理がついたように,リスベルもまた,気持ちの整理がついていった。リスベルは,千雪を人間以下の畜生としての奴隷として扱うことを決めた。半年後,どうせ死ぬなら,徹底的に千雪を辱めると覚悟を決めた。その覚悟は,今のところ,夢の中では有効だ。
その夜,リスベルが覚悟を決めた千雪を辱める行為は,彼の夢の中でみごとに実現した。彼は夢の中で『世界一幸せだ!』と叫んだ。
リスベルの偽りの幸せなひとときだった。
ーーー
出発を延期して2日目の午後,ベルダン領主と,残りの引継ぎを完了して,夕刻を迎えた。
リスベルは,千雪に自分の荷物を亜空間領域に収納させた。これで,とりあえずは,旅たちの準備はできた。
この屋敷を去った後,金を稼ぐ必要がある。千雪は,リスベルの奴隷だ。ならば,リスベルは,ただ,千雪に金を持ってこいと命じるだけでいい。リスベルは,別に何も心配しなくていい。
だったら,金の集まるところがいい。つまり,王都だ。しかも王都なら,この敷地から転移魔法陣がある。しかも王都は人口が多いから,ルベット夫人の追跡をかわしやすい。方針は決まった。
後は,千雪を辱めるだけに頭を廻せばいい。
出発を延期して3日目。今日は,この屋敷を去る日だ。
ー 食堂 ー
昼食を取るため,食堂に全員集合した。
ベルダン領主「今日は,リスベルと千雪がここを出ていく日だ。リスベル,準備は整ったのか?」
リスベル「はい。3日遅らせてもらったので,余裕で準備ができました」
ベルダン領主「そうか。千雪さん,これが契約書案だ。特に拘束力はない。だが,現時点の気持ちでいいので,この内容に依存なければサインしてほしい」
契約書が千雪に渡された。その契約内容は,単純なものだった。
『リスベルとの契約終了後に,その家族に復讐する気持ちが生じた時でも,長兄リスダンかもしくは生まれてくる子供のどちらかは殺さないこと』
千雪にまったく異存はなかった。サインをして,ベルダン領主に契約書を返した。
ベルダンは,サインされた契約書を母ルベットに渡した。
ベルダン領主「ルベット,将来はわからないが,現時点では血族の誰かが生き残ることになる。どうせ半年後にはリスベルは,千雪さんに殺されるだろう。だから,ルベットが無理に早めにリスベルを殺すこともあるまい」
ルベット夫人「あなた,わかりました。将来はわかりませんけど,今は,おとなしく,引き下がりましょう。でも,家族全員が殺された場合のことも考えて,対策をしておいてください」
ベルダン領主「わかった。最悪の場合についても,対処できるようにしておこう」
ルベット夫人「私は,これ以上何も言うことはありません。リスベルさん,今生の別れの前に何か言う’ことはありませんか?」
リスベル「今日が,お父様,お母様の顔を見る最後になります。これまで育てていただいてありがとうございました。親不孝の私をお許しください。
兄のリスダンには,挨拶する機会はありませんでしたが,よろしくお伝えください。
それと,私たちの行き先を,王都にすることにしました。王都では,身分を隠して,どこかでひっそりと生活することにします。王都に行くにあたり,こちらにある王都への魔法陣を使わせていただきたいのですが,よろしいでしょうか?」
ベルダン領主「リスベルの最後のお願いになるな。別にかまわんが,王宮の中庭に転送されることになるぞ」
リスベル「それでかまいません」
ベルダン領主「そうか。では,食事としよう」
リスベルは,両親と一緒に過ごす最後の食事した。その食事の間は誰も発言はしなかった。ルベット夫人は,ほとんど食事を取らず,終始,リスベルを睨みつけていた。その視線を受けて食事するリスベルは,一刻も早くこの場所から逃げたかった。
リスベルと千雪は,食事をとったあと,そそくさと魔法陣で王都に転移した。
ーーー
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