第4話 ナタリーの推理
ナタリーは,おもむろに自分の推理を語り始めた。
ナタリー「この事件を解明するには,サリーのしている指輪の存在を無視できないわ。あの指輪の特性を理解すれば,おのずと正解が見えてくるわ。
あの指輪は普通の指輪ではないのよ。王族のみが持つことが許されるという,精霊が宿している指輪よ。でも,一度,王族がその指輪を捨てたら,拾ったものが所有権を持つの。でも,決して王族でないものが指輪の所有権を他の者に与えることはできないのよ」
バロッサ「ごめん。よくわからない」
ナタリー「具体的に言うわね。サリーのしている指輪は,先代の国王が捨てたものなのよ。そして,尊師がそれを拾ったの。10年前のことだわ。だから尊師はその指輪の所有権があるの。でも,尊師は,その指輪を他人に与えることはできないのよ。他人に与えるためには,一度,王族に指輪の所有権を移す必要があるの。だから,サリーは,尊師からではなく,王族から指輪を受け取ったのよ」
バロッサ「なるほど。でも,それは,今回の事件とは,あまり関係ないと思うのですけど?」
ナタリー「確かにそうね。でも,サリーは,どうしてこの世界に来たか知っている?」
バロッサ「この世界?何?どういうこと?」
ナタリー「ふふふ。彼女は,この世界の人間ではないのよ。彼女は,一大決心して,この世界に来たのよ。指輪を渡した王族とどんな約束をしたかはわからないけど,半端な気持ちでこの世界に来た訳ではないのは間違いないわね。そして,そのアレンジをしたのは,何を隠そう,あの有名な尊師よ。そして,尊師にそのような行動をさせた人物,それこそが,あの指輪の精霊なのよ。
サリーは,精霊に見染められた金の卵なのよ。その意味が分かる?」
バロッサ「サリーは精霊に見染められたのですか?? 精霊を宿した指輪,,,つまり,精霊は,みすみすサリーを見殺しにさせることはしない,ということですね?」
ナタリー「そういうことよ」
バロッサ「なるほど。ブラック・ウルフ事件では,精霊の存在も考える必要がある,ということですね?」
ナタリー「そうなるわね。ブラック・ウルフ事件について,私の推理を今から述べるわね。
ブラック・ウルフ事件があったのは,サリーがこの世界に来て4か月後の出来事よ。その4ヶ月間で,サリーは,どの程度の魔力を持つようになったかわかる?」
バロッサ「われわれが4ヶ月かけてマスターできる魔法っていったら,いくら魔法の才能があっても,初級レベルに到達する前の,初歩の初歩レベル程度でしょう?」
ナタリー「そうなるわね。でも,私が予想するに,指輪の精霊は,尊師に効率よく魔法を習得させるようにと命じたはず。そう考えないと辻褄が合わないわ。私の予想はこうよ」
ナタリーは,決して常識では到達することのできない推論を展開した。
ナタリー「どんな方法かは分からないけど,わずか4ヶ月で,われわれ魔族が修得する現代魔法のS級レベルに相当する魔力を獲得したと断定するわ。そして,それは,『魔力』ではなく,『霊力』を修得したはずよ」
バーン!
バロッサは,机を叩いて立ち上がった。
バロッサ「ば,ばかな!そんなありえない!どんな超天才でもS級のレベルにいくには,少なくとも7,8年はかかるかず。それに,サリーは,魔水晶で魔力をはかっても,魔力ゼロだし,絶対にありえない!」
ナタリーが期待したような反応をバロッサがしてくれて,彼女は得意がった。
ナタリー「ふふふふ。そこが,今回の2つの事件で,われわれ一般人が絶対に受け入れられない点なのよ。そして,バロッサ,あなたが,無実の罪を被らされる大きな要因になったともいえるわ。
尊師は,私の婚約者よ。彼の性格はよく知っているわ。彼はかなり慎重な人よ。サリーも尊師に対して忠実に行動しているはず。だから,何事も尊師の了解を得て行動していると思っていいわ。
仕事紹介所で登録したばかりのサリーが,男性3名のパーティーに加わる,という状況は,普通は考えられないわ。ましてや,サリーは地球界の人間よ。言葉だって,なんとかぎりぎりコミュニケーションできるレベルよ。余計慎重になるはずだわ。
尊師は,ブラック・ウルフ事件のような最悪に近い状況になる可能性を容易に想像できたはずよ。何事にも慎重な尊師が,サリーに仕事紹介所で自由行動を許可したのよ。どう考えればいいと思う?」
バロッサ「確かに,S級魔法を使えるレベルだったら,仮に男性3名と戦うことになっても,余裕で切り抜けることは十分に可能ですね」
ナタリー「そうよ。S級レベルに達していれば,私だって,サリーに自由行動を許可していたと思うわ。ただ,私には精霊の能力がどの程度がよくわからなかったけどね」
バロッサ「え?では,今はわかるのですか?」
ナタリー「あなたが話してくれたブラック・ウルフ事件の状況説明を詳しく聞いて,ほぼ完全に把握できたわ」
ナタリーは,ますます得意げに話し続けた。
ナタリー「では,まず,ブラック・ウルフ事件の状況を再現してみるわね。
サリーは,自分が魔力ゼロだと公言していることから,男性3名は,容易に彼女を手込めにできると考えたのも当然だわね。おまけに森の中では,彼女が助けを求めても,誰も助けに来る人はいないわ」
バロッサ「まあ,男なら,誰しもそう考えるのが当然だ,というのは,ちょっと言いすぎかもしれないけどね」
ナタリー「ブラック・ウルフを追い出すのに,松明を使ったと思うけど,サリーの役割は,松明を持たせてブラック・ウルフを追い詰める役割だと思うわ。
そして,逃げてくるブラック・ウルフを狩る役割は,あなたの弟,ジョセフ。上級の電撃魔法の使い手だから,楽勝で倒せたでしょう。4人がブラック・ウルフを仕留めた現場に集まってから,事件が起きた。
彼女の服が燃えていたことから,まず最初に,弱い火炎魔法で彼女の服を燃やした。慌てた彼女は,急いで服を脱ぎ捨てた。そこまでは,容易に類推できるし,まず間違いないと思うわ」
バロッサ「同感です。現場の状況に合っていますから。そこからが,いくら考えても答えが出てこないんですよ」
ナタリー「そうね。そこからは,私もちょっと自信がなくなるけど,でも八割かた合っているいると思うわ。女性を辱めるのに,一番楽な方法はなんだと思う?」
バロッサ「女性を気絶させることでしょうね。暴れることもないし,男性側も対応しやすいかな?,,,そうか,電撃か。微弱な電撃攻撃をすれば,容易に気絶させられる。でも,気絶させられたなら,なんで手首を縛る必要があったの?わからん。思考が前に進まない」
ナタリー「簡単なことよ。状況に合うように,サリーに能力を与えればいいのよ。微弱な電撃攻撃をサリーに加えた。しかし,それにサリーは耐える能力があった。それだけのことね。気絶しないから,たぶん電撃のパワーをアップして2発目を放ったと思うわ。それでも気絶しなかった」
バロッサ「なるほど。そう考えるのですか。ナタリーさんは,魔法も超一流ですけど,推理力も超一流ですね」
ナタリーは,さらに得意げに自分の推理を披露した。
ナタリー「ふふふ。おだててもだめよ。推理の続きをするわね。
サリーは,自分が辱めを受けるかもれないと思い,相手を殺すことに決めたでしょうね。肉体改造されたサリーのスピードはきっと速かったでしょう。サリーの身近にいた2人の首を跳ね飛ばすのに,1秒もかからなかったでしょう」
バロッサ「なんと,そんなに早く動けるのですか,サリーは?」
ナタリーは,バロッサが,その都度驚くのに,快感を覚えてきた。
ナタリー「ふふふふ,そうよ。あなた方には,ちょっとわからないでしょうね。『霊力』というものが」
バロッサ「いったい,霊力ってなんですか?魔力とは違うのですか?」
ナタリー「実は,私もよく知らないの。でも,以前,尊師が言った言葉を覚えているわ。霊力,それをマスターすると,自己の動きを何倍にも加速できるって。その言葉を信じるなら,サリーは,自己の動きを何倍にも加速させて,2人の首を跳ね飛ばしたことになるわ。
2人を倒した後,サリーは7メートルほど離れていたジョセフを倒すべく,高速で移動した。
ジョセフは,2人の首が飛んだのを見て,はっきりと認識したでしょうね。最大の攻撃をもって,対応しないといけないって。そして,最大魔力をもって,サリーに電撃を浴びせた。
その結果,どうにか,サリーを気絶させることができた。もしかしたら,上級を超えて,S級,いや,SS級に近いレベルの魔力を放出したのかもしれないわね」
バロッサ「もしそうだったなら,しばらくは,まったく体が動かなくなる。5分以上はその場で硬直状態になったはず。その間,ジョセフは,恐怖を感じた。もし,途中でサリーが意識を取り戻したら,一貫の終わり。
幸い,サリーは,気絶したままだった。私なら,傍に剣があるなら,それですぐに殺すけど,なんで手首を縛ったのかな?」
ナタリー「もともと傍に剣がなかったのよ。ジョセフは,恐怖にかられていた。自分の最大魔法を放った相手でも,気絶させることしかできなかった。しかもいつ意識を取り戻してもおかしくない状況よ。
サラシが胸を巻いていたので,刺激を与えずにゆっくりとはずして,刺激を与えずに手首を縛った。びくびくしながら手首を縛ったでしょうね。そして,やっと一息ついて,呼吸を整たと思うわ。
ブラック・ウルフの討伐のときは,雨が降っていなかったけど,その後,雨が降ってきた。雨でまた意識を取り戻す恐れがある。まだ起き上がれる体力はなかったでしょうけど,なんとか,剣を持ってきて,一番高く真上に挙げて,剣の自重を使って,喉元目掛けて,確実に殺そうとした。その状況なら,私ならそうするわ」
バロッサ「確かにナタリーさんの言う通りだ。その状況なら私もそうする。中途半端に傷つけて,即死を免れてしまうと,逆に確実に痛みで意識を取り戻してしまう。もしそうなったら,一瞬で拘束を解き,自分が殺されてしまうと危惧した,,,,」
ナタリー「そして,剣を頭上に持ち上げたとき,『悲劇』,いや『精霊による怒り』を引き起こした。
強烈な雷撃がジョセフを襲った。精霊が尊師を通して,一生懸命実践してくれている大事な『霊力の使い手』,そして,いずれは精霊のために自分の望みを実行に移してくれるであろうサリーを,精霊がみすみす殺されるに任せたままにしておくと思う?
それは絶対にありえないわ。自ずと精霊がどう動くか分かろうというものよ」
ナタリーは,自分の魔法以外で,他人に誇るものはないと思っていた。だけど,自分の推理で,バロッサを納得させることに,ことのほか優越感を感じることができた。自分の推論に酔いしれ,頻繁に含み笑いをしてみせた。
ナタリー「ふふふふ。これまでの経緯を正確に把握していれば,容易にわかる推論よ。精霊は,当時,十分にパワーをためていたでしょうね。尊師とサリーによる強い信仰の力は,かなりのものだったと思うわ。だから,精霊がジョセフを電撃魔法で消し炭にさせるくらいは,朝飯前だったでしょうね」
バロッサ「ナタリーさん,精霊が存在する,という前提で,推論をしているけど,そもそも,精霊って,ほんとうに存在するのですか??少なくとも私は,普段,精霊の存在なんて,まったく気にしていないし,精霊をこの眼で見たこともない」
ナタリー「そうね。王族との付き合いがない人にとっては,その反応は自然だと思うわ。私の知る限り,この国には,6種類の精霊を宿した指輪が存在するし,隣の獣人国には,少なくとも1種類の精霊を宿した指輪が存在するのよ。その中でも,サリーのしている指輪は,唯一,霊力を扱える精霊が宿した指輪よ。他の精霊は,現代魔法を扱える精霊よ。だから,サリーのしている指輪に宿した精霊は,昔から,他の精霊たちから仲間外れにされて,いじわるされてきたらしいわ」
バロッサ「なるほど,そうなのですか。だから,サリーのしている指輪に宿す精霊は,いずれは,他の精霊たちに復讐する機会を虎視眈々と狙っている,という訳ですね?」
ナタリー「そうよ。もっとも,この話は尊師からの受け売りだけどね」
ーーー
バロッサ「ナタリーさん。指輪の話,そしてブラック・ウルフ事件については,よくわかりました。次に,爆破事件の真相を教えてください」
ナタリー「爆破事件は,とっても簡単な話よ。サリーは,本来なら,午後8時前にレストランに着いていた。それが30分も遅れた。どうしてだと思う?」
バロッサ「サリーさんが,30分以上も引き留めるだけの影響力のある人と話していた。そうか,尊師と話していたのか?」
ナタリー「まず,間違いないわね。尊師は,影の死刑執行人というあだながついているのよ。以前は,私もよく尊師と共同で執行してきたものよ。
ふふふ。まあ,それはおいといて,最近は,とんと,そんな話は聞かないわね。たまたま,大臣がこんな辺鄙な田舎町に,愛人を囲ってしまったのが運の尽きね。この町に,尊師が地球界から帰ってきているのを見落としていたんでしょうね。国王の側近は,尊師が地球界から帰ってきているのを知っていたので,すぐに,尊師に命令がくだされ,大臣の死刑執行を任されたのでしょう。
尊師も,内情を知り尽くしている私が,現場検証に来るなんて思ってもみなかったでしょう。私以外,この魔法陣の機能を理解できるものはいないわ。上級以上の魔力を注入できるのは,あなた以外にもいたはず。例えば,尊師の契約獣とかね」
バロッサ「契約獣?尊師が契約獣を持っているのですか?珍しいですね。いったい,どんな契約獣なんですか?」
ナタリー「可愛いマウスよ。ペットとして,しばらく私のもとで遊んでいたわ」
バロッサ「マウスなら,人目につかずに,魔力を注入することも可能だったでしょうね」
ナタリー「たぶん,そうだと思うわ。そのマウスは,サリーが尊師から受け取ったはず。つまり,サリーはレストランの近くで,たまたま尊師と偶然に出会ったのでしょう。そして,尊師は,サリーにこう命じたはずよ。
『もし大臣を殺す機会があれば,確実に殺せ』と,そして,マウスをサリーにあずけた。本来なら,マウスは,地表を這って,玄関から人に見つからないように侵入する予定だった。でも,サリーが持ち込むほうがより確実だからね。
サリーにとっては,急のことで,心の整理に時間がかかたのでしょうね。人を殺めた経験があるとはいえ,急に殺人執行を命じられたようなものだからね。
絶対にばれないで大臣を殺す機会があれば,という仮定の条件つきだったとは思うけど,サリーにとっては,必ず執行しなけばならないと感じたでしょう。
なんとか,気持ちを殺人モードに切り替えて,かつ,あなたには,おかしな行動がばれないようにと,必死だったと思うわ」
バロッサ「なんと,犯人は,サリーが持ち込んだマウスだったのか?」
ナタリー「マウスは,微細起爆式魔法陣に魔力を注入しただけよ。大臣を確実に殺したのは,他でもない,サリーなのよ」
バロッサ「えーー?それは,あり得ない。サリーは,ずーっと,私の眼の前にいて,私の話を熱心に聞いていたし,爆風で飛ばされた時は,大臣のそばにいたけど,大臣に危害を加えた様子はまったくなかった」
ナタリー「ふふふふ。あなたは,私の予想通りの反応をするわね。嬉しいわ。世の中,あなたみたく,単純な思考の人だけだったら,この世の中は,すごく平和になるでしょうね」
バロッサ「私が,単純な思考??自分では気が付かないけど,,,」
ナタリー「そうよ。まず,ずべてを疑うべきよ。あなたが,サリーをずーっと見ていた,ということもね。一つ質問するわ。あなたが,サリーを見過ごした瞬間があるはずよ。よく思い出しなさい」
バロッサ「見過ごした瞬間があるとすれば,爆破した瞬間だ。私は,とっさに両腕で顔面を覆った。その瞬間だけだ。爆破が収まって,サリーを見ると,床に倒れていた。そばには,大臣も横たわっていた」
ナタリー「つまり,あなたは,サリーが飛ばされる時の状況を見ていなかったのね?」
バロッサ「それは,無理だ。粉々になった無数の木片が四方に飛び散ったのだ。自分の顔面を守るのに精一杯だった」
ナタリー「なるほどね。サリーが爆風で飛ばされて,空中に滞在しているその瞬間を,あなたは見ていないのね?ということは,つまり,こういうことね。
爆風で大臣が,たまたま,サリーの後ろ側に,飛ばされた。サリーはとっさに,そのスピードに合わせて飛びのき,空中に滞在している瞬間に,大臣の喉元に手刀を浴びせた。
その切り口から判断して,サリーは,すでに体の部位を刃物に変形させる能力を身に着けていたと断定していいわ。
おまけに,爆風の速度にも余裕で対応できた,ということは,人間の運動能力の4,5倍ものスピードで移動できたってことよ。
魔法陣も使わずに,そのような行動ができたってことは,サリーは,すでに霊力の優れた使い手になった,ということね。簡単に言うと,『化け物』レベルになった,といってもいいわ。
サリーの坐っていた場所では,確実に木片の直撃はあったはずだけれど,軽々と防いだでしょうね。サリーについていた切り傷なんかは,後で適当に自分でつけたものでしょう。
というふうに考えていくと,今のサリーは,SS級の剣士レベルに相当するかもしれないわ。この魔界でもトップクラスの暗殺者になったと判断するのが妥当ね。
どう,おもしろい話でしょう。でもこの話はまったく確証がないわ。信じる?」
ナタリーは,バロッサの顔を改めて凝視した。彼の顔は,少し赤くなっていた。
彼にとっては,青天の霹靂だった。魔力ゼロのサリーが,実は,SS級の剣士に相当する実力の持ち主だったと誰が想像できよう?15歳の少女が,ついさっきまで,笑顔で笑っていたのに,次の瞬間,人をためらいもなく殺すなんて,誰が想像できよう?
ナタリーの推理は,現場の状況から判断しても,矛盾するところはなかった。それも当然のことだ。矛盾しないように,現場の状況に合致するように,サリーに能力を付与させる,という強引なものだった。だが,サリーのバックには,あの尊師が,さらに精霊を宿した指輪の存在がある,ということを加味すれば,あながち間違った推論ではない,と思えてしまう。
バロッサは,しばし,沈黙を守った後,ナタリーに返答した。
バロッサ「ナタリーさん。あなたの推理は,強引すぎると思ったが,どうも,そうでもないようだ。サリーが,SS級の剣士に相当する実力を持っていれば,全て説明がついてしまう」
バロッサは,一息ついて,次の言葉を語った。
バロッサ「ナタリーさん。納得です。納得しました。ここまで,見事に推理していただいたこと,とても感謝いたします。私では到底導き出すことが不可能な推理でした」
バロッサは,再び一息ついて,言葉を続けた。
バロッサ「ナタリーさん,約束通り,喜んで自白します。私が微細起爆式魔法陣に魔力を注入しました,,,,」
ナタリー「やっと,納得してくれたのね。私も嬉しいわ。これで私の役目も終わりだわ」
バロッサ「あの,一つだけお願いしていいでしょうか。両親に手紙を残したいのですが」
ナタリー「いいわよ。間違いなく,あなたの両親に渡すようにしておくから,この場で書きなさい。でも,手紙の内容は,検閲させてもらうわ」
バロッサ「それで結構です。ありがとうございます。では,この場で手紙を書きますので,少し時間をください」
バロッサは,この場で両親に手紙を書いた。
『 お父様,お母様
弟,ジョセフが住んでいた町,ベラルーレに来て,2週間が経過しました。そして,やっと,ジョセフが被害を与えたという女性,サリーに接触することができました。
彼女とレストランで食事をしたのですが,そこで,大臣の暗殺事件に巻き込まれてしまいました。
私は,ある人物から大臣に,サプライズの祝福のためという説明を受けて,ある魔法陣に魔力を注入したのですが,それが,どういうわけか,暴発の原因になってしまったようです。そして,この暴発が大臣の死因の一つになってしまいました。
その罪で,2,3年ほど服役の義務が生じてしまうことになります。ですが,私のことは,心配する必要はありません。服役中でも,魔法の訓練はできますので,レベルアップに励むことにします。魔法の訓練で数年,修行に出かけた,とでも思ってください。
さて,ジョセフの死因についてですが,現場の状況から判断して,たまたまですが,雷に打たれて,死亡したものと判断しました。事故死です。また,ジョセフは,サリーに被害を与えた,という事実はありませんでした。ですから,犯罪を犯したということではありません。どうか,安心してください。
詳しいことは,私が数年後に修行から戻ってきたら報告します。それまでは,元気でお過ごしください。
バロッサ 』
ーーー
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