第65話 (1/3) 太平洋上で翔真
八月、遠洋の海底に掘った深い穴に強力な爆薬をしかける作業がほぼ完成した。
九月、計画責任者の翔真と関係者が、その設置状況を見届けに現場まで船で行った。
一方、さくらは大きな臨月の大きなおなかを抱えて、かえでらと一緒に翔真の帰りを待っていた。これは日本中の国民も一緒だった。大噴火を避けられるかどうか、世紀の一大作戦だったからだ。
そして天界。見習い(失礼!)から譲り受けたタブレット端末を今はショウが使う。
「ショウ、シミュレーションの結果はどうですか?」
「はい、見習いさん。えーとですねえ、少しやばいかもですね!」
「やばいって何なのよ? ショウ」
サラが静かに熱くなる。
「えー、爆薬の量が足りないですね。噴火は誘発できないな」
「どうすんのよ!?」
「サラは熱いなあ。分かんないよ。見習いさ~ん」
「仕方ない人達ですねえ、と言っても、これはさすがに私でもどうすればいいか分かりません。国の一大事ですので、マスター達と相談しましょう」
見習いはマスターに相談しに行った。マスターは他のマスターと話して対応策を考えた。天界でもなかなか無い大きなアクションだった。
―― 話がついてから見習いが報告しに来た。
「ショウさん、全国のマスター達が立ち上がりました。みんなで力を合わせて翔真さんの計画を成功させます。サラさんは、さくらの事を守ってあげてください」
「見習いさん、わかったわ。マスター達を動かしてくれてありがとうございます」
そしてサラが叫ぶ
「フェリン!」
フェリンがやってきた。何か以前と様子が違う。
「ご無沙汰でした。サラさん」
「あれ、フェリン、少し太った?」
横からショウが言う。
「失礼ですねえ、私は少し大きくなっただけです!」
すると見習いが言った。
「フェリンですが……もう少しで変態します」
「!!」
「変態なんだ!」ショウがニヤニヤする。
「その変態じゃありません!」フェリンが否定する。
「ショウ、ここで言う変態って、多分昆虫のようなやつのこと」
「その通りです。ショウさん、頭悪いですねえ」
「フェリンは一体どう変わるんですか?」
サラが聞く。
「秘密です。びっくりしますよ」
「フェリン、じゃあ、さくらに安心して子供を産むように伝えてくれる?」
「はい。任せてください」
「それから翔真には、何があっても最後には成功するって自信を持たせて」
「わかりました! 行ってきます」
――太平洋、高速観測船上
「坂本博士、B183のセッティング状況、最終確認完了しました」
「よし、僕にも見せて」
翔真は念入りに海底の縦穴に仕込まれた高性能爆薬の設置データを確認した。結局、慎重派によって爆薬の量は相当減らされてしまったので、成功確率は落ちたが、できるだけのことはしなければいけない。
「アンドリュー君、オプションBのセッティングの方はできた?」
「ええ、ショーマ。ノープロブレム。オールクリア」
「サンクス、よし、じゃあみんな、日本に帰るぞ」
快晴の空に、はてしない太平洋の水平線。
さざ波に反射しきらめく陽光に翔真は思わず呟いた。
「天の方々、僕らをお守り下さい」
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