二人のその後
第63話 (25/1/1) さくらと翔真、結婚から2年後
年末のニュース番組、あるアナウンサーが番組を降板することを告げた。
「では坂本アナ、挨拶をどうぞ」
さくらは神妙な面持ちで自分に向けられているカメラに向かって最後の言葉を話し始めた。
「みなさん、今日の放送を持ちまして、私は番組を離れさせていただきます。あの、一部報道がなされておりますのでご存じかとは思いますが、私事とはなりますが、この度子供を授かりまして、少し早いですが産休をいただきたいと思っております」
スタジオ内に拍手が鳴り響いた。
さくらが翔真と結婚して2年、待望の妊娠だった。アナウンサー業も板につき、テレビ局の顔として活躍していただけに残念がる声も多かった。
さくらの目から涙がこぼれた。
「この番組を担当させていただいて、3年が経ちました。色々な思い出があります。優しい共演者、スタッフの皆さまと仕事ができて、とても楽しかったです。ありがとうございました」
天界では、サラがその放送の様子を見ていた。
リライフしている自分を見て、満足げに頷いている。
もらい泣きで、サラの周りはティッシュだらけである。
「良かったね、さくら。良かったね、私」
そこへ、ショウと見習いが帰ってきた。ロトンのせいで不幸に見舞われている下界を救いに一仕事してきたのだ。
「サラ、ただいま~。つっかれた~」
見習いがたたみかけるように、後ろからショウを罵る。
「ショウ君、あなたはたいした仕事をしてないじゃありませんか! そんな事ではマスターになれませんよ! もう見習いになってから七年も経つのに!」
「だってえ、見習いさん。あいつらすばしっこいんだもん~。最近は狡猾になってきてるし」
「こら、私はもう見習いじゃないって、何度言ったらわかるんですかっ! いい加減、その呼び方変えてくださいっ」
「だって、見習いさんは見習いさんだよね~ サラ」
涙を拭いたサラが反応する。
「ショウ、見習いさんはマスターなんだから、マスターって呼びなさいよ! ねえ、見習いさん!」
「あの、サラさん…… ふざけてます?」
ショウがサラが見ていた映像を見て言った。
「あ、さくらじゃん! 何? 引退会見? 花束持って」
「まあ、そう言う事。産休よ」
「可愛いじゃん。誰かさんより」
「一言余計よ! バカショウ!」
「ふむふむ、さくらさん、どうやら双子を授かったようですね」
見習い(本当は、マスター)が言う。
「え、双子なんですか! すごいわ!」
「はい! これは楽しみですね」
「いつ生まれる予定なの?」ショウが聞く。
「懐妊してから280日後ですから、予定日は来年の九月九日ですね」
「楽しみ! 男の子かな~ 女の子かな~」
「本当に楽しみですね、サラさん」
「だんなの翔真は何やってんのかな~」
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