第62話 (12/31) 結婚式

 天界ではサラがそのやりとりを見て呟いた。


「そういうことなのね」

「かえでさん。すごいですね。卓也さんを変えてしまいましたね。お二人は間もなくご結婚されるようです。あと確認しましたがこの件はマスターも絡んでいるようです」


 見習いが言った。


「あんな風に対応すれば良かったのね。いや私には無理だな。さすがかえでだわ」

「俺は今のさくらでいいよ、あれはきつい」

「さくら、って何よ。さくら、でしょ」

「はい。すみません。今のさくらさんがいい、です」


 見習いが結論づけた。

「さくらさんはかえでさんに似ていますよ」


 ショウが降参した。

「もう勘弁してください」


「まあさくらと翔真がこれからどんな風になるか分からないけど、私たちがこれからも見守っていけば、大丈夫だねっ」


「色々な困難があるのも分かっているから、どう動けばいいかちゃんと教えてやろう。さりげなくね」


「噴火はたぶんいつか起きますので、ショウさんも翔真さんも勉強と対策が必要ですよ」


 ふとサラは真顔になってショウと見習いに言った。


「あの、この状況だとさくらと卓也は当然結婚しないよね」

「それは確定ですね」

 見習いが言った。


「あの、くるみって存在しないことになるの?」

 サラが呟いた。重い事実に気がついたのだった。


 見習いもショウもその事実に気が付き、沈黙せざるを得なくなった。サラの最愛だった子供がこの世に現れないなんて……


 人生を変えることには一長一短がある。サラもショウもそんな事実に気が付いた。

 サラの目に涙が浮かんできた。


「サラさん、あきらめないで下さい。一度授かった命はもう一度現れるようにバイアスが働くはずです。見守りましょう」


 見習いがサラを励ました。

 


 ◇ ◇ ◇



 地上の世界はそれから五年経過した。


 さくら二十九歳、翔真二十八歳、晴れて二人の結婚式が執り行われる。


 親族、招待客の中に、卓也とかえでの夫婦もいる。


 さくらと翔真が、かえで夫婦に近寄った。

 さくらとかえでが、姉妹の会話を交わす。


「かえでお姉ちゃん。色々結婚準備手伝ってくれてありがとう」

「さくら、あんたはやっぱりきれいだね。ウエディングドレスも似合っていて素敵」

「さくらさん、翔真君。この度はおめでとうございます」


 すっかり優しい男に変身した卓也が二人を祝福してくれる。


「卓也さん、ありがとうございます」


 翔真が答えた。


 ――かえでの傍におめかしした、小さい女の子がいた。


 その可愛い女の子はさくらを見上げて笑った。

 かえでと卓也の四歳になる子供だった。

 さくらは少ししゃがんだ。


ちゃん。来てくれたのね。ありがとう」


 くるみは恥ずかしそうにかえでの足にしがみついた。

 そう、くるみはかえでと卓也の子として生まれたのだった。


「うん。さくらちゃん、かわいい」


 弾けるくるみの笑顔から嬉しい言葉が放たれた。


 翔真とさくらも笑顔で互いの目を合わせた。




   了





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読了ありがとうございました。本編はこれで終了となります。

追加のエピソードがありますので引き続きお楽しみください。

1月1日から6日まで6話、毎日投稿します。

(6千字足りないんだよ~😭)


 三杉 令

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