第60話 (12/26) 「やつ」が再び現れた 

 二人で並んで駐車場まで下りてくると、駐車場にはさくらを迎えに来たかえでと、もう一人の男性が並んで立っていた。


 かえでが「お帰りー」と声をかけた。隣の男性もにこやかに微笑んでいる。


「ただいまあ」さくらは答えながらその男性を見たとたん、気が付かないくらいの変化ではあったが、一瞬表情が曇った。


 初めて見る人なのに嫌な感じ。しかもかえでの(たぶん)彼氏なのに。


「かえでさん、お迎えお疲れ様」

「翔真こそ、昨日はたいへんだったねー」


 さくらが訊いた「そちらの方は?」


「へへー。彼氏、さくら達には初公開!」かえでは自慢げだ。

「私、河合卓也と言います。初めまして、さくらさん」


 さくらはその名前になぜか背筋が少し寒くなった


「は、初めまして。姉がお世話になっております」


 天界では突然のサラの元夫登場に騒然となった。


「何あいつ、いつの間にかえでに取り付いてんの? こっちはせっかく忘れかけてたのに」サラは瞬間的に激怒していた。


「これはとんでもありませんね」

 見習いも驚く。


「まじか、懲りない男だな。まあ姉妹だから同じ好みなんだろうな」


「私だけでは飽き足らず、かえでまでも毒牙にかけるか。今度は呪い殺して地獄に送ってやる」


 ショウはサラの言葉を聞いて震えあがった。

(この守護霊は怖すぎる)


 しかしショウはここでふと思い出して見習いに呟いた。


「そうだ。そう言えば前にマスターがロトンだかなんだかの話で、卓也さんで例を示すみたいなことを言ってなかったっけ?」


「言っていましたね。どうなったんでしょう」

 見習いが答えた。


「実は半年くらい前から付き合っていたんだ。知らなかったでしょ」かえでが言う。

「うん。やるね、お姉ちゃん……」

「さくら、ちょっとこっち来て」


 かえではさくらを引っ張って、卓也から離れたところに移動した。

 翔真はそのタイミングで間を持たせるために卓也に話しかけた。


「卓也さん。こんにちは。ぼくは坂本翔真って言います」

「はい。かえでさんに伺っています。かえでさんとさくらさんの幼馴染ですよね」

「まあ、八神家とは腐れ縁です」


 そうして二人は雑談を始めた。

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