第59話 (12/24) 箱の中身 

「え? 何あれ?」


 翔真がさくらに渡した箱を見て、天界のサラが呟いた。


「普通このシチュエーションで渡す箱よりずいぶん大きいんじゃない? お菓子? まさか大きな宝石じゃないでしょうね? 貧乏な翔真の分際で」

「嫌な予感がする」


 ショウが心配する。


「私もです。翔真さん、センス大丈夫ですか?」と見習い。

「中身が変なものだったら怒るからね」


 サラがショウを睨む。


「俺は関係ないよ。あいつのセンスだよ」

「あいつはあなたでしょ」


 さくらが恐る恐る箱を開けた。

 中身は、なんと石。少し黒っぽく、ところどころつるつるしている。


「……何、これ?」

「……隕石」


 翔真が答えた


「隕石? 隕石って…… 何か特別なやつ?」

「いや。普通の隕石。ちょっとこの大きさだと高いんだけど」

「……」


「ショーウ。あんたやってくれたわね。最悪よ。翔真は何であんなものあげてるのよ。センスなさすぎでしょ。あんたのせいよ、何指導してきたのよ!」


 サラはショウの首を絞め始めた。

 すると見習いが慌てて言った。

「さくらさん、さくらさん、見てください」


 翔真が、平然と言った。

「ちょっとその石、持ち上げてみてよ」


 さくらは茫然としながら隕石を見つめていた。口が少し引きつっている。


「え、ええ。隕石ね」


 隕石をそっと持ち上げると、

 その下から指輪がキラっと光った。


「渡したいのは下のそっちの方」


 さくらは隕石を持ちながら、指輪に目が釘付けになった。


「え、指輪?」

「サプラーイズ」

「もーう。何するのよー、こんなことして指輪に傷が付くでしょ。」


 さくらは隕石をポイと投げ捨てる。


「おいおいおい、それも貴重品だぞ」


 翔真は慌てて隕石を拾いポケットに入れた。

 そして改めてさくらに指輪を差し出し、


「さくらさん、結婚の予約をさせてください」

「普通、結婚してくださいじゃないの?」

「まだ働いていないので、仮予約でいいです」

「中途半端ねえ。もっとはっきりしてよ! でも……」


 一拍おいて、さくらは笑顔で言った。


「いいよ。ばか翔真に免じて」


 さくらは指輪を取り、自分の指に嵌めようとした。しかし、指輪はサイズが大きくぶかぶかだった。さくらは手を上下に少し振り、


「愛しの翔真さーん、サイズが少し…」

「ごめん。昨日急いで買ったもので。親指にでも嵌めて」

「はは。するかっ。後で直そうね」

「結婚まではもう少し色々努力します。時間をください」

「早めにね。まずはオーストラリアに今度こそ連れてって」

「はい。資金貯めます」

「大学院もおろそかにしちゃだめよ」

「そっちも頑張ります」

「あー、また弟みたいになっちゃった」


 二人は笑って、最高の景色に目を向けた。

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