第55話 (12/14) 事故は本当に起きるのか?
その頃、天界ではショウ、サラ、見習いの三人が詰めの話し合いをしていた。
「今日も起きませんでしたねえ」
「起きなかったねえ」
ショウが疑問を投げかける。
「おかしい。事故、いやあの老人の踏切突入は、見習いさんの予想ではほぼ絶対に起きるんでしょ?」
「はい。かなりの高確率で起きます。しかも平日です」
「じゃ、明日で確定じゃん」
「ほぼ確定ですね」
「でも翔真もみんな、半信もう起きないって思って安心しちゃってるよ。見習いさん、もう一度明日のシミュレーションをしてくれない」
「最新の状態で予測してみますか。少々お待ちください」
しばらくして見習いが端末を見つめながら言った。
「残念ながら、やはり今のままでは起きます。しかもさくらさんも危ないです」
「何でえ?」
「たとえさくらが電車に乗っていたって、今日のように俺が緊急停止ボタンのところにいれば、大丈夫だよね?」
「あの、翔真さんはおそらくそこにいません」
??
「翔真が寝坊とか?」
「いえ、松山さんの行動が変わります」
「松山さんが? どう変わるの?」
「明日は病院へ行く前に、別の所に寄るようです。その為家を早く出発します」
「どうして別の所に寄るの?」
「何か奥さん関係の用事ができたようです。そして今日までとは別の踏切でさくらさんの乗った電車と衝突します」
まじか。ショウとサラは愕然とした。翔真は松山さんが明日の予定を早まることを知らない。さくらもせっかく電車の時間を早めたことが仇となることを全く知らない。
「どうする? 何か対策は。あーもう翔真は寝ているよ。時間が無い」
「見習いさん、なんでもっと早くシミュレーションしてくれなかったの。昼間なら色々やりようあったのに」
「迂闊でした。明日松山さんがやらかすことはわかっていましたが、翔真さんの緊急停止で回避できると思い込んでいました」
「だからあなたはまだ見習いさんなのね」
「サラさん。手厳しいです」
「どうしよう。なんか手は」
見習いが提案する。
「また夢を使いますか? 翔真さんに事故の場所、時間が変わることを夢で直接伝えましょう」
「できるの?」
「これからマスターに緊急連絡しますので何とかなると思います」
「そうだ。それしかない」とショウ。
三人はああだこうだと話し合い、内容を固めた。
「よし、翔真はこれでいこう。でも時間的にぎりぎりだな。翔真が夢をきちんと理解してうまく動いてくれるといいけど。あと松山さん次第というところもある」
さくらの方も夢で何かできないか話したが、見習いは首を横に振った。
「さくらさんの方は難しいですね。事前のインプットが無いですし、たぶん安心して今夜は夢を全く見ないか、甘い夢しか見ようとしていません」
「仕方がない。翔真にかけよう」
「あー私、怪我しないで。本当、私の人生トラブルばっかり。翔真お願い。あと託せるのはあなたしかいない」
サラが嘆いた。
翔真の夢が始まった。見習いさんが急遽作った新聞記事をアップで夢の中の翔真に見せる。
凄惨な列車事故の見出し、被害の状況。多数の死傷者が出ている。運転手の名前。しかし事故現場の写真が違う場所。違う踏切。 そして新聞の日付が映し出される。
十一月十一日土曜日、そして記事本文の出だしには十日七時頃、〇〇市の踏切で…と書かれている。金曜日の朝だ。
映像は切り替わり、松山氏と奥さんの当日朝の会話が聞こえる。
「あなた、朝病院に行く前に吉田さんの家に寄ってくれない。今日中に渡さなきゃいけないものがあるから」
「吉田さん家? スーパー高田の近くのか。ちょっと遠回りだな。病院が終わった後じゃだめなのか?」
「吉田さん、今日出かける用事があって帰るのは夜になるんですって。朝渡した方がいいでしょう?」
「しょうがないなあ」
次に踏切に場面が変わり、松山氏の車が踏切で往生しているところが前方正面から見える。松山氏が車を出て後方に逃げる。右側から電車が近づく。電車の中が映し出され、さくらが見える。警報機の音が鳴り続ける……
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