第36話 (11/2) 試練:私の人生ってどうしていつも……

 一月の末になってもさくらは体の調子がまだ戻らない。


 さくらは、さすがにおかしいと思い始めていた。


「フェリン、さくらにまだ病院行き説得できていないの?」


「サラさん、毎日さくらさんの心に訴えているんですけど、どうも体調が悪いことを認めたくないみたいで、軽いカゼかストレスだと思い込もうとしているんです」


「明らかにおかしいのにね。ショウ、翔真とかえでに働きかけて何とかできない?」


「わかった。翔真を使おう」


 ショウはフェリンを通じて翔真に伝えた。


「さくらに病院に行くよう説得を。かえでも使って」


 翔真はかえでとさくらに連絡した。


「かえでさん、何かさくらが疲れが取れないって言っているんだけど、さくらの様子はどうですか? 病院で一度診てもらうように言ってもらえます?」


 かえでに説得をお願いした翔真は、直接さくらにも釘を刺した。


「旅行はまだ先だから、今の内に体調を万全にしておいて。やっぱり病院には一度行かなきゃだめだよ」


 かえではさくらと連絡を取った。


「さくら、あんたオーディションの前に少し調子悪そうだったけど今はどうなの?」


「うーん。なんかあまり変わらないかな。たいしたことは無いけど疲れが溜まっていく感じ。昨日はちょっとつらかったんで痛み止めとか飲んで寝たよ。そういえば翔真からも病院に行っておけって言われた」


「そうなの、まじめに病院行きなよ。ここ一、二か月、相当頑張ったから一度体を診ておいてもらった方がいいよ。旅行前に何かあったら困るでしょ」


「わかった。かかりつけの病院に行ってみる」


 翌日、さくらは近所の病院で診察を受けたところ、こう言われた。


「八神さん、すみませんがもう少し大きな病院で診てもらいましょう。紹介状を書いておきますね」


 さらに翌日、少し不安な気持ちで紹介された病院を受診すると、すぐに各種の検査を受けることになった。そして検査結果はその二日後に聞くことになった。


「八神さん、検査の結果が出ました。少し言いにくいのですが、血液に異常がありまして、いわゆる白血病だと思われます」


「え? 白血病ですか?」


「そうです。血液のがんです。進行が速そうなので、急な話ですが明日から入院して治療しましょう。ご家族にも話しておいて下さい」


「そんな。本当ですか? がん、ってどれくらいの程度なんですか?」

「まだどちらかというと初期なので見つかってよかったです。抑え込める可能性は十分あります」


 そしてさくらは急遽入院することになり治療が開始された。入院は少なくとも二ヶ月以上かかりそうであることが医師から告げられた。


 それを天界から見ていたサラが思わず目を覆った。


「どうしてっ! どうしていつも私ばかりこんな目に遭うの!」


 ショウも見習いも、そんなサラにかける言葉がなかった。

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