第32話 (10/24) 無事デート完了 ~大学受験へ
日曜日、さくらは喜々として翔真を引っ張ってディズニーランドに行った。
文字通り、本当に翔真の服を引っ張っていくさくらであった。
「いやあ、いい天気だね。翔真、ほら急いで」
カップルというより、どちらかというと姉と弟という感じで、翔真はさくらに引きずられて行く、背の高い子供であった。
さくら達はいろいろなアトラクションに乗り、飲食をし、パレードを見て夢の国を満喫した。
翔真もまんざらではなく内心は楽しかったが、慣れないシチュエーションで居心地が多少悪かった。ぎこちないながらも表面上はありきたりの会話をして、さくらに合わせるだけの感じであった。
二人はそんなディズニーランドデートを満喫した後、さくらが時々行くショッピングエリアに行った。さくらがいろいろな服を選んでいる間、翔真は携帯をいじりながら時々ちらりとさくらの様子を見たりしていた。
その頃には翔真もデートに慣れて来て、遅ればせながらハッピーな時間を噛みしめていた。
「これに決めたっ。翔真、どう?」
さくらが気に入った服を翔真に見せて聞いた。
「いいんじゃない。似合うよ」
「ありがとう、翔真。はいこれ持って。レジに行こう」
翔真は服を受け取ると価格を確認して、少し予算オーバーだがこれくらいならいいか、と、清算を済まして買った服をさくらに渡した。
「なかなかいい一日だったねえ。翔真君ご苦労様、また行こうね。そうだ、撮った写真はシェアしておいてね」
暗くなった自宅の前でそう言うと、さくらは家の中に入っていった。
ドアを閉める前に、隙間から顔をちょこんと出し翔真にウインクして手を振った。
翔真はどきっとしたが、やれやれ機嫌が良くなってよかったよ、と安心した。
突然のミッションを無事こなし、その夜は一日の疲れをどっと感じた。
ベッドの上で、さくらの笑顔を思い出し、少しにやける翔真なのであった。
◇ ◇ ◇
――それから数年の月日が経った。
さくらは高校卒業後に大学に入り、学業の傍らその磨き上げたルックスを生かして、タレントのオーディションを時々受けていた。
一方、翔真は高校三年生の時に、偏差値のやや高い大学を目指して受験勉強を始めた。一年間彼としてはかなり努力したのだが、最初の受験では残念ながら合格することはできなかった。
滑り止めの大学に行くことは可能だったが、母親と相談した結果、一年だけ浪人して同じ大学を目指すことにした。
天界のメンバーは、受験勉強の間、翔真の能力をできる限り発揮できるように、サポートを続けた。そのおかげで一回目の人生とは比べ物にならないほどの集中力と学力を身に着けさせたのだが、翔真の選んだ大学の学部はレベルが高く、あと一歩のところで合格を逃したのであった。
浪人生活を始めた時に天界のメンバーは話しあった。
ショウとサラが話す。
「あと少しのところだったな」
「そうね。かなり頑張ったんだけどね」
「翔真さんの今の頑張りようでしたら、来年はほぼ確実に合格できますよ」
見習いが嬉しいことを言う。
「そうだな。我ながら素晴らしい成長だ。自分の時とはだいぶ違う」
ショウは今の翔真は、我ながらよくやっていると満足であった。
サラがふと思いついた。
「でも今回翔真が選んだ大学は地元から遠いんだよね。大学に行ったら、さくらとはそうそう会えなくなる。浪人やっている間は地元にいるから、あと一年はさくらも気軽に会えるけど」
「そうか、まあそうだね」
「それから入試は大丈夫だろうけど、将来のことを考えると、この一年で学力ともう少し体力も付けておかないとね」
「体力か。この一年間は受験勉強一筋だったもんなあ」
「そう。ショウは覚えてる? 最後の時のあなたの体力ときたら……」
ショウは忘れる筈もない苦い記憶、さくらを背負って山を登った時の事を思い出した。
「覚えているさ。体力が無くてすごく後悔したね」
「この一年は勉強と体力づくりは両立できるんじゃない?」
「確かにやるべきだね。合わせて、さくらも、もう少し痩せた方がいいかもね?」
「何ですって? 失礼ね。私は軽かったでしょ! 病人だったんだから」
「いや、なぜかすごく重たかった」
「あんたの体力が無いからそう感じただけでしょ!」
とっくみあいが始まった。というか一方的にサラがショウに掴みかかった。
それを見て見習いは嘆いた。
「またですか。本当に姉弟げんかみたいです。お二人とも懲りないですねえ」
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