第31話 (10/22) 翔真、嘆きのお誘い💦
ショウは翔真にさくらを遊園地に連れて行くように仕向けた。
翔真自身はさくらと田中の一連の件については知らなかったが、さくらの様子をかえでから聞かされていた。
「翔真、そう言えばさくらなんだけど、最近ちょっと暗いんだよね。詳しくは話せないけど人間関係で」
「ふーん。それはご愁傷様」
「でさ、ちょっと週末どこかにさくらを連れて行ってあげてくれない? あんた、どうせ暇でしょ」
かえではまるで弟に言うかのように翔真に要求した。
「えーなんで俺が。そんなに暇じゃないよ(ゲームやりたいし)。それにどこかってどこよ?」
「たとえば映画とか、遊園地とか。さくらが退屈せずに時間をつぶせれば
「嫌だよ、恥ずかしい。あんまりそういう所、女の子と行ったことないし。かえでが連れていけばいいじゃん」
翔真にとって、幼馴染とは言え女の子をエスコートしてどこかに行くなんてハードルが高すぎると感じた。緊張して気疲れするに決まってる! それでもかえでは粘る。(いつから私はこんなに妹思いになったんだろ)
「だめ。私は週末忙しいし、男相手の方が刺激になっていいの!」
「俺はドリンク剤か? 俺まだ高校生で落ち込んでいる女の子を元気づけることなんかできないよ。しかも俺の方が年下だぜ?」
「よく知っているあんただからさくらも気が休まるのよ。ぐだぐだ言っていないで、や・っ・て!」
かえでに強く出られると翔真は逆らうことができない。かえでは近所のボス的存在である。翔真は「しゃあないなあ。何で俺が急にこんなことしなくちゃいけないんだ」とぶつぶつ呟きながら、八神家に向かった。
「さくらー。いるー? 用事あるんだけど―」
翔真が抑揚も張りもない声で叫ぶ。
二階からムッとした表情で降りてきたさくらがぶっきらぼうに言った。
「何よ、翔真」
「あのさー、さくら、今度の日曜日ひま?」
翔真のセリフはほとんど素人の演技みたいに棒読みである。やる気の無さが見え見えである。さくらが断ってくれればそれでもいい。
「忙しいわよ。何?」
「えー暇じゃないの? 何か用事があるんですか?」
「そうじとか洗濯とかするのよ」
「えー珍しい。でも一日中じゃないよね?」
「💢あんた喧嘩売ってんの? 一日中よ。きれい好きなの!」
「土曜日はどうですか?」
「土曜日も一日中そうじと洗濯よ」
「嘘つきー、あの、どっちかの日に遊びに行きませんか?」
「はあ、あんたと? 何言ってんの?」
「はい。俺とです」
「なんで私があんたと遊びに行かなきゃいけないのよ」
そこで満を持して奥から姉のかえでが現れた。
「さくら、ちょっと出かけたら? 珍しく翔真が誘っているんだし、遊びついでに好きな服でも買ってきたら? たぶん翔真が買ってくれるよ」
――え、かえで姉ちゃん何を言う! そんな話は無かったぞ。
『服も買う』にさくらはぴくっと反応した。
「翔真、本当? あなた洋服代持ってくれるの? どういう風の吹き回し?」
「あの、そんな費用は……」
「翔真くーん!」
かえでが大きな声で翔真の言葉を遮り、上から冷たい目線で微笑むと、優しい声ながら有無を言わせない口調で翔真に言った。
「さくらを誘うんだから、お金は十分持っていくよね?」
かえではそう言いながら、さくらに見られないように自分を二度指さすしぐさを翔真に見せた。(翔真、金は私が出すから!)
それを察した翔真は、渋々答えた。
「はい。費用は大丈夫です。」
「うーん。それならいいか。むしゃくしゃしていたし。じゃあ日曜日で。どこ行く? 二人だけ?」
翔真が答える。ああ、決まってしまったよ。
「どこでもいいけど、うーん例えば映画とか?」
「何その投げやりな言い方。あなたが誘ってるんでしょ!」
「いやその。さくらの行きたいところがいいかなって」
「うーん、じゃあね、ディズニーランド。いやディズニーシーかな」
さくらの表情が緩んできた。でも……
え、女の子と二人でディズニーランド?
ハードル高いぜ。小学生の時以来行ったことないし。
「いや、近くで映画の方がいいんじゃないかな?」
「ディズニーランドがいいの!」
さくらの中で行先は確定してしまった。
さらにかえでも乗ってきた。姉妹そろってえげつない。
「いいね、ディズニーランドなら最高じゃん。翔真、決まりだね」
「……」
翔真はあきらめて、日曜日にディズニーランドに行く約束をして、いそいそと自分の家に帰って行った。
「くっそ、日曜日つぶれた……」
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注:
翔真は実は大好きなさくらとデートできるので、内心はとても嬉しいんです。
嬉しいのですが、それ以上にデートなんて大それたことが果たしてうまくできるのか不安でしょうが無いのです。全てのセリフは照れ隠しです。
文面では分からないと思いますので代弁解説でした!
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