第30話 (10/19) 告白の行方* 

 去っていく二人を見届けた後、サラはショウに追及を始めた。


「ショーウ! 私、相手の事を調べておいてって言ったよね? 彼女がいるかどうかリサーチしていなかったの?」


 ショウは青い顔になって言った。


「サラさん。まさか、あの男子に彼女がいるなんて想定外でした。それにいたとしても、あなたのような美人が断られるなんてありえないです」


「うるさい! どうしてくれんのよ。このままじゃ、いずれ私がまた傷ついちゃうじゃない。今回は自分からアプローチしたのにー」


 見かねて見習いが口を開いた。


「ショウさん、浅はかです。事前にきちんと調べておいてください」


 そして今度はサラの方を向いて、


「サラさん、この後さくらは確かに少し複雑な状況になるのですが、おそらくこれがきっかけで、今後つきあう相手を選ぶにはどうすれば良いか、考えるようになると思います」


「ほう。それなら、ぎり許せるか……」



 ◇ ◇ ◇



 それから一か月間、さくらは田中とラインのやりとりをしたり、一緒に街に出かけたりすることもあった。


 しかし、やがて田中はあえなく彼女の存在を白状した。

 二人の関係は清算された……


 さくらが冷めていく様子を三人で観察した後のことだった。


「あの一つお伝えしておきます。これはさくらさんの勘違いなのですが、今回結果的にうまく行かなかったのは自分の魅力が低いからだと思ってしまっています」


 見習いは続ける。


「それで、さくらさんはこれから努力するようになります。今までは言い寄られてばっかりだったので、自分を磨く必要をあまり感じていなかったと思いますが、今回の件で自分をより魅力的になるように色々工夫し始めますよ」


「あら、それはいいわね」


 サラは肯定した後、少し考えてからショウに言った。


「でもやっぱり問題なのはショウが事前に田中さんのことをよく調べなかったことよ。彼女がいることが最初からわかっていたら、傷つかない別のやり方があったでしょ!」


 ショウは「うう、しつこい」と項垂れた。


 見習いがショウをかばった。


「まあまあ、さくらさんは今回の件で少し傷つきましたが、その分強くなります。なので、あまりショウさんを怒らないでください」


「それは別です」


 サラはきっぱりと言った。


「ショウ、あなたは職務怠慢でさくらの心を傷つけたので、その罪滅ぼしをして頂戴。翔真にアクセスしてさくらをどこか気の利いたところに連れて行かせて心の傷を癒してあげて。わかった?」


 小さくなっていたショウが、一瞬困った表情を見せてから観念したように絞り出した。


「はい。わかりました。すみませんでした。サラ様」

「様じゃないわよ。ばかショウ。まったく!」


 見習いがフォローした。


「私もフェリンに特別にかえでさんにアクセスしてもらいますね。かえでさん経由で翔真さんにさくらを誘うように促してもらいます」





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*タイトルの「告白の行方」は昔の映画『告発の行方』をもじっています(笑)

*誤字や気になる点あればください ^^;

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