第四章 さくらのリライフ

第28話 (10/15) 高校生のさくら

 いよいよリライフ本番! 

 さくら達が生まれた時からの人生サポート作戦が始まった。


 天界の守護霊サラとショウは、さくら達が生れてから十歳くらいまでは、時折細かいサポートを行ったものの、大きな修正は必要無かった。


 元々一回目の人生は先祖達がきめ細かく対応してくれていたようだ。そして小さな子供の時は、二人とも精一杯生きているので、サポートも非常に楽だった。


 しかし十代になると、さくら達には周りの友達や先生、時には家族からでさえ、必要以上のストレスがかかるようになってきた。


 さくら達の自我が少しずつ強くなっていき、興味のあること、自分のやりたいことがいろいろ出てきたのに対し、時間やお金や親達の考えで思い通りにできなかったからだった。


 また、木の枝がいろいろな方向に延びるように、友達の中にもいろいろな性格の子が出始めて、互いに軋轢あつれきを生み始めた。


 サラは見習いのアドバイスで、さくらに対して子宮頸がんのワクチンを小、中学生の間にしっかり打たせるようにした。これで完全に防止できるわけではないが、かなりリスクを減らせることはできる。もう子宮頸がんにかかることは無いだろう。


 ついでに同じワクチンを翔真にも打たせた。男も同じウイルスによるがんのリスクがあるのである。ウイルスを交際相手にうつしてしまうリスクも……


 さくらは高校生になり、恋愛、進路など諸々の事柄について悩むようになった。


 どうして交際がうまくいかないのだろう。将来私は何をしたいのだろう―― ある夜も、さくらはそんなことを考えていた。特に恋愛が深刻そうである。


 最近気になっている田中という先輩がいて、どうしたものかと思いあぐねている。

 その様子を見ながらショウはサラに話した。


「ほら高校生の君がまた考え込んでいるよ。もてるんだから好きな男子がいたら、さっさと声を掛ければいいだけなのに」


 軽く言うショウにサラはくぎを刺した。


「あなたねえ。そんなに軽々しく言える訳ないじゃない、他人事だと思って、もう」


「いや、さくらなら大丈夫だって。今がチャンスかもしれないよ。ぐずぐずしてたらチャンスを失う事もある。相手は三年生なんでしょ?」


「それはそうだけど。あまりそういうアプローチはしたことがないから…… いきなり話しかけたら、こいつ何だと思うかもしれないし、既につきあっている人がいるかもしれないし」


「ウジウジしていてもしょうがないよ。見習いさんもそう思うでしょ?」


「まあ、そうかもしれませんけど、きっかけも無く、いきなり話しかけるのは少しハードルが高そうですね。」


 何も考えずにあおるショウに見習いは苦笑した。


 実はこの時、見習いはシミュレーションで知っていた。あの男子にさくらが声をかけた場合、結局さくらが傷つくことになりそうな事を。


 見習いはショウをたしなめるような目で見つめて心の中で呟いた。


(ショウさん。逆に、もしうまく行ったら、あなたとさくらの将来の関係に影響が出るかもしれないんですよ。よく考えずにけしかけていますが、分っていますか? 浅はかですね)


 サラは手を顎につけて考えこみ、やがて一つの結論に達した。


「うーん。ここは一つチャレンジさせますか。これまで受け身の恋愛ばかりだから、たまには攻めることも必要かな」


「そうこなくっちゃ」


 ショウはやはり軽いまま。

 サラはフェリンを呼び出し、さくらにさせて欲しい内容を説明した。

 フェリンは驚いた。


「えー! さくらにそんなことをさせるんですか? それも人生初めてですよ。それに間違って、と言ったら悪いけど、あの男の人と仲良くなっちゃったら、翔真さんはどうするんですか?」


 フェリンの問いにサラはさらっと答える。


「まだ高校生だし、先も長いから、とりあえず翔真のことは考えなくていいよ。若い内にいろいろな交際を経験しないとね。あ、なるべく健全な交際ね」


 フェリンは納得した。


「そうですか、わかりました。今回は難しそうなので少し時間をかけて、さくらの心に働きかけてみます」


 フェリンはさくらの心にアクセスし、自分から田中先輩にアプローチするようにバイアスをかけていった。


 その結果、バイアスをかけられた地上のさくらは思った。


(なんか、今回は私から声をかけなきゃいけないって気がする。もう高校二年生だし、今までは好きなタイプに言い寄られたことが少なかったから、今度はこっちから積極的にいってみよう。でも私がこんなことを決めるなんて信じられないな。今までは考えたことすらなかった。誰かに背中に押されているような不思議な感じがする)


 その様子を見てショウは喜んだ。


「よしよし。やる気になってきたな。いやあ楽しみだな。さくらにこくられた瞬間の男の顔をぜひ見てみたいよ。真っ赤になるんじゃないかな?」


「何、面白がっているのよ? さくらは真剣なのよ。にやにやしていないで田中先輩の事を探っておいてよ。好みとか交友関係とか調べておいてね!」


「はいはーい」


 ショウはあくまで軽い。

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