第3話『果樹園の美少女』


 俺は地図とコンパスを使って、西の方に向かう。

 30分くらい歩き、果樹園に到着。

 果樹園かじゅえんで誰かがいた。


 女性であった。身長は158センチくらいである。

 まるでドイツの民族衣装みたいな服を身につけている。

 獣人だろう。腰まである茶髪の髪に、獣耳が生えている。

 そして、お尻の当たりに、もふもふの尻尾がある。


「うおおおお! 獣人じゃないかあああああ!!」


 俺は思わず叫んでしまった。だってよ、リアル獣人だぞ!!

 俺が元いた世界には、いないんだぞ!


「ふわぁ~!!」


 どうやら、女性の獣人は俺に気づいたようだ。

 俺は、小走りで彼女の元に行く。


「君は?」

「私はこの魔導浮遊島を管理している者です」

「管理人か!!」

「ひゃっ! ひゃい!」


 彼女は、俺の馬鹿デカい声に驚き、うっかり、手に持っていたハサミを地面に落としてしまった。


「すまない、驚かせて」

 

 俺は声のボリュームを小さくし、謝罪する。


「あ、いえ。大丈夫です」

 

 彼女は慌てて、手を振り、しゃがんで、ハサミを拾う。


「もしかして、島王様ですか?」

「島王?」


 島王って、島の王様だよな?


『はい、そうです。真地様は、島王ですよ。この魔導浮遊島を統治する王様、島王様であります』

 神田島さんが答える。


「そうだよな?」

「??」


 彼女は首をかしげる。


「あ、いや。俺はどうやら、島王らしい」

「そうなんですか!?」


 彼女はガバッと、俺の両手を握る。


「島王様なら、この果樹園にある物、それだけじゃなく、島にある物すべて、ぜーんぶ! 島王様の物ですよ!」


 彼女は早口で、しゃべる。うお、滑舌かつぜついいし、よくまないな。

 それに、近くで見てわかったが、彼女は、かなり美人だ。

 獣人美少女に手を握られるなんて、俺って、かなり幸せだしラッキーだ。


「そ、そうなのか?」

「はい! ぜひ、私が管理している果樹園の果物を取って食べてください! ぜひ、ぜひ、食べて下さい! 美味しいですから!」

「ありがとう! じゃあ、お言葉に甘えて、リンゴを食べてみるよ」


 俺は、近くにあったリンゴの木に近づき、リンゴをもぎとる。

 真っ赤なリンゴだ。それに、良い香りがする。

 俺は、かぶりついてみる。

 ムシャムシャ――


「うめぇ!!」

 かなり甘くて、ほんのり酸っぱい。それに新鮮でジューシーだ。

「おいしいですか!?」

「ああ、うまいぞ!!」

 美少女獣人は笑顔になり、飛び跳ねた。

「良かった!!」


 この子は可愛いな。きっと、モテるに違いない。


「(ああ、島王様、素敵だなぁ~! ペロペロしたい! イヤ、むしろペロペロされたいかも~! 裸だし、ハアハアしちゃうよ!)」


 彼女は俺をじっと見つめる。俺の顔に何かついているんだろうか?


「あ!」


 俺、下着しか身につけてないじゃないか!


「あの、その……」


 どうしよう、これはマズいよな?


『冒険者の服をお渡します』

「ありがとう!」


 袋がポッと出てきた。俺はキャッチし、袋から冒険服を取り出し、着替える。

 神田島さんがいてよかった。いなかったら、服を手に入れるまで、ずっと半裸状態で生活する事になっていただろう。


「(島王様の生着替えだ~ッ!! これって、超、貴重なんじゃない??)」


 彼女は両手で顔を隠し、指の隙間すきまからのぞく。

 俺はそんな彼女の本性ほんしょうに気づかず、冒険者の服に着替え、終える。


「すまない、裸を見せてしまって」

「いえ、大丈夫ですよ(全裸が見たかった)」

「あのさ、出来ればうちの家に来ないか? ははは、なんてな?」


 オジサンが幼い女性を口説くなんて、良くないと思うが。どうだろうか?


「いいんですか!? 島王様の家に行って!!」


 美少女獣人は、前のめりで近づく。目がキラッキラだ。


「お、おう……来てくれると、嬉しい」


 そんなに喜んでくれるとは、予想外だ。


「では、行きます!!」


 そして、俺は彼女を家に連れて行った。


「あのさ、君以外にも、誰かいるのかな? この島には?」

「いますよ~。私みたいな島民は、私を含めて、7人です。後は精霊とか妖精とか、そういった存在は、たくさんいます」

「へぇ~、そうなのか」

「島王様は、異世界から来たのですか?」


 お、よくぞ聞いてくれた!


「ああ、そうだ。魔法という概念はあるが、実際に魔法が扱える奴なんて、おそらくだが、ほんの一握ひとにびりだろう。大半の人間は魔法を使えず、代わりに科学や物理、医療とか、いろいろ発展していて、それで生活している」

「科学と物理ですか……」

「ん? 何か、知ってる?」

「この島には、昔、古代人が魔導科学の技術でこの島を浮かせ、魔導浮遊島をつくったとされています」

「魔導科学だと!? それって、魔術と科学が融合した学問の事か??」

「私にも、よくわかりませんが、この魔導浮遊島のどこかに、大精霊様が住んでいるらしいです。昔、古代人の方が大精霊様に魔導科学を教え、大精霊様はその知識をいかして、魔導科学を研究し、開発をしているという、お話を聞いた事があります。大精霊様なら、魔導科学に詳しいのでは?」

「その大精霊様に会ってみたいな」

 ぜひ、いろいろと聞いてみたい。だが、俺は根っこからの文系。理数系じゃないので、詳しく話されても、ついていけないだろう。

 それでも、魔導科学とやらは、ロマンがある。ぜひ、その大精霊に会ってみたい。


「そういえば、君の名前は?」

「私はルチアと申します。ルチア・メディオスです」

「ルチアと呼んで良いか?」

「はい、呼んで下さい! 島王様のお名前は?」

「真地九郞だ」

「マジ様ですか?」

「九郞でいい」

「では、クロウ様とお呼びしますね!」

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