登園風景。


 Aさんが車で通勤する道中に、保育園があったという。


 朝の時間帯で、信号の無い横断歩道を渡ろうとしている親子連れがいたそうだ。

 Aさんは微笑ましいなと思いながら車を停車させ、その親子連れを渡してあげることにした。


 そんなことが、数ヶ月に渡って何度かあったという。


 そして、ある日。朝の通勤中、保育園が取り壊されていたことにAさんは驚いたという。


 ついこないだも、親子連れが登園していたのに、いきなり保育園を取り壊すだなんて・・・と。


 その驚きのまま、Aさんは友人に話をしたそうだ。


 すると・・・


「なに言ってるの? その保育園、数年前から閉園になってて、子供が通ってるはずないんだけど」

「え? いや、だって、こないだ、親子連れが歩いてたよ? お母さんと子供、二人で仲良く保育園に入ってくの見たし」

「数年前から閉園してて、取り壊し予定の保育園に?」

「・・・いや、まあ、保育園の近くなのに、やけに・・・静か・・で子供の声もしないなとは思っていたし、他の子供も見かけなかったけど・・・」


 と、Aさんは友人と話をして、その保育園へ向かう親子連れの不自然さを自覚したらしい。


 ちなみに、Aさんが朝にその道を使うようになる前から、その保育園は既に閉園していたそうだ。

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