電機ポット。


 ある日、Aさんの親戚で、独り身の老人が亡くなったのだそうだ。なので、その亡くなった人の家具を分けることにしたという。


 Aさん一家が貰ったのは、電機ポットだった。


 それは、Aさん一家が以前に使用していた電機ポットとは違うメーカーの電機ポットだったそうだ。


 中を洗ってお湯を沸かすと、メロディが鳴って沸騰を知らせてくれたという。


 Aさんがお茶を飲もうと給湯ボタンを押すと、


「給湯します。お気を付けください」


 と若い女性の声で喋ったという。


 Aさんは、喋るタイプの湯沸し器だと思ったのだそうだが・・・その電気ポットが喋ったのは、その一度きりだったそうだ。


 二度目に沸かしたときには、なぜかピッという電子音しか鳴らなかったという。


 電気ポットの説明書に拠ると、音声機能は付いてなかったらしい。


 Aさんの他の家族も、その電機ポットが喋ったのを、ちゃんと聞いていたそうだ。


 一度きりだが・・・


 ちなみに、亡くなったのは老婦人なのだとか。


 彼女のイタズラ・・・だったのだろうか?

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