　Ａさんは、道行く人に会ったら挨拶するようにと躾（しつけ）られていたという。

　道を通りながら、

「おはようございます」

「こんにちは」

　と、道行く人へよく挨拶をしていたという。

「こんにちは」

　声を掛けても挨拶を返してくれない人もいる。

　ある日、Ａさんが友人と歩いていたときのこと。

「こんにちは」

　と、すれ違った人に挨拶をした。

　しかし、挨拶が返らなかったそうだ。

　Ａさんは、挨拶をしたのに挨拶が返らないこともよくあるので気にしなかったそうだ。

　けれど、友人に言われたという。

「アンタ、誰に挨拶してるの？　偶に誰もいないところに向かって挨拶してるよね？」

　と、言われて気付いたらしい。

　区別（・・）が付いていなかったことに・・・

　それ以来、Ａさんは知らない人へ挨拶するのをやめることにしたそうだ。

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