第9話 久しぶりの食事会と確認

 そうしてミリネ達の元へ行き、盛り付けられた食材を厨房へ持っていった。

 大丈夫か? これ。

 一部なんか得体のしれない料理があったが、まさかクロナが作ったんじゃないだろうな?

 

「あの、クロナ?」

「何?」

「まさか、料理したのか?」

「ん、兄の為に丹精込めて作った」


 ふふんっと鼻を鳴らして自身満々に言う彼女にもう何も言う気はないというか言えるわけない。

 可愛い妹が頑張って作った料理に意見など出来るはずもない。

 まぁ、覚悟は必要だけど。


「それじゃ、かんぱ~い!!」


 ミリネの元気一杯に合図すると、彼女に続き乾杯する。

 ミリネはクーヤさんの隣で、反対側にミラさんその隣がクロナだ。

 

「師匠、注ぐ」

「お、ありがと気が利くねぇ~」

「師匠、何か食べたいものある?」

「鶏肉食べたい」

「野菜も食べる」

「え~、野菜やだ」

「食べる」

「嫌だ!!」

「あれ見る」


 そう言ってクロナはミリネ達を指差す。


「師匠、あ~ん」

「ん~、新鮮な野菜は美味しいねぇ~。 ミリネもほい」

「はむっ、う~んトマト甘くておいしいですねぇ~」


 ミリネとクーヤさんはぞくぞくと野菜を食べている。


「クロナ、彼女たちと同じものを!!」

「ん、もう盛り付けてある」

「クロナも一緒に食べるわよ!!」

「ん、食べて大きくなる」


 そういうと、二人顔を合わせむしゃむしゃと食べる。

 仲がいいな。

 喧嘩が多いが、なんだかんだ二人とも息があっている。

 師匠、皆元気にしてますよ

 二組の師妹の微笑ましい姿をみて反対側の席にある師匠の写真に心の中で語り掛けた。

 心なしか、師匠が笑っているように見えた。

 そうして僕らは食事を終える。


「それじゃ、僕はそろそろ帰るよ」

「うん、また明日ね」

「兄、また明日」

「ばいば~い」

「じゃ~な~」


 今日は久しぶりに集まれてとても楽しかった。

 ユナを紹介できなかったのは残念だが、また機会はあるだろう。

 そう思い帰宅すると、就寝準備を済ませ眠りについた。


 次の日、僕とミリネは剣の稽古をするためにクーヤさんに呼び出された。


「それじゃ、どっちからやる?」

「はい!! 私からお願いします!!」

「うんうん、流石私の妹子だ」


 そういうと、木剣を持ち彼女の前に立つ。

 クーヤさんは剣ではなく刀の形をした木刀を手に取り、構える。

 

「さぁ、成長した所を見せてくれ」


 そう言ってゆっくりと歩み寄ると、いつの間にかミリネとの間合いを詰める。

 

「え?」


 ミリネは気が付くと、懐を侵略され首に刀の切っ先を突き付けられている。

 

「ありゃ、まだこれは早かったか。 視界では追えてるようだからてっきり反応できてると思ったんだけど」


 少し残念そうにしながら彼女を見ると、後ろに飛び先程の場所に戻る。

 追えてる? 

 ミリネはあれを追えるようになったのか。

 端から見ても全くと言っていい程見えなかったのに、間近に来られて見える時点で以前のミリネとは違う。


「う~ん、見えてるけどやっぱ速いなぁ~。 ねぇ師匠、次は実践的にしてくれない? 何か見えそうなの」

「いいよ、痛くても泣かないでね」


 そうして次に見た瞬間、クーヤ先輩の木刀をミリネが両手の短剣で受け止めていた。


「ほう、やるじゃないか」


 クーヤさんは嬉しそうに目を見開いている。

 これ以上は見えないので、目に魔力を込める。

 視という魔法で2人を見る。

 

「じゃあ、少し上げよっか」


 そう言って暴風の様な剣戟がミリネを襲う。

 視でこの速度だ、解けば何十何百もの斬撃が降り注いでいるだろう。

 ミリネはそれを何度か受けながらも短剣でクーヤさんの斬撃を受けている。

 この状況で追いつきかけている時点で、ミリネはもう相当の域に達しているだろう。

 そうしてミリネは剣を弾き飛ばされ、クーヤさんは嬉しそうに見つめている。


「うん、ちゃんと修業しているようで何より、これからも頑張るんだよ」

 

 息が荒れて膝をついて今にも倒れそうなミリネにそういうと、クーヤさんはこっちを向く。

 次は僕の番だろう。

 

「立てるか?」


 問いかけるが、息が辛いのだろう。

 僕は彼女を抱え、近くの木に寄りかからせるとクーヤさんの元へ向かう。


「魔道具は使っていいよ、その方が面白いしね」

「わかりました」


 鞄から仮面を取り出し、装着する。

 これは僕とクロナ、ミラさんと共に開発した魔道具で僕やクロナ、ミリネの三人専用の魔道具だ。

 視より高性能で魔力を流すことで全身の身体強化に加え、思考加速する等、剣技魔法両方を兼ね備える魔道具だ。

 魔力を流すと、彼女を見ると彼女は一気にこっちに加速する。

 

「歩いてこないんですか?」

「いやいや、今の君相手にそんなの必要ないでしょ」


 怒涛の斬撃を放ちながらクーヤさんは涼しげな顔で言ってくる。

 仮面でやっと追いつける攻撃なのだ、端からみればミリネ以上の攻撃に違いない。

 何とか受け止めるが、息がヤバい。

 受け止め続けるのが精一杯で、反撃ができない。

 

「どうした? 息が荒れてるぞ?」


 涼しい顔で言ってくれるなぁ~。

 こっちは仮面付きで疲れが出ているのに、彼女は疲れ知らずだ。 

 力の差にうんざりする。

 そうしていると、下がる。

 瞬間、僕の身体から力が抜ける。

 何とかしのぎ切った……。

 

「……ふぅ」


 少し疲れたように大きく息をすって吐くとこっちを向く。

 

「いい感じだね、前より強くなってるじゃないか。 仮面無しでもミリネ並みに強いんじゃない?」

「いえ、ミリネの方が強いです」

「そうなの? にしてもその仮面便利だね、私もその仮面欲しいな」

「作りましょうか?」


 正直、作ろうと思えば時間はかかるが、作れないことはない。

 作らない理由は誰しもが欲するからだ。

 この仮面の存在が知られれば面倒な事になるのは目に見えてるし、最悪国と戦わなければならないという状況に発展するかもしれないので目に見える所で管理したいというのもある。


「いいの?」

「えぇ、構いませんよ」


 正直クーヤさんやミラさんには作ってもいいと思ってる。

 奪われる心配がないし、何より信用が出来るからだ。

 




 


 

 


 



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