第30話
智代に案内され、ようやくそのお店に到着する。
「ここだと思うんですけど……」
到着したお店は、正しく杏奈が欲しがっているフルーツゼリーの売っているお店だ。
「うん、間違いないここだよ。ありがとうね智代ちゃん」
「あってて、良かったですー」
お店のショーケーキの前に立ち、フルーツゼリーのコンプセットがあるのを確認すると店員に声をかける。
「「すいません。このコンプセットください」」
亮が指さしたと同時に、隣から誰かが同じものを指さす。
「あ、あら村上杏奈様。こんなところで奇遇ですね」
隣にいたのは、神宮寺瑞希だった。
キラキラとした装飾品や、アクセサリー等を付けていて、かなりの成金ぶりをアピールするような私服を着ていて、周りには数人のお付きの女子たちを従えていた。
「ご機嫌麗しゅうございます。神宮寺さん」
(こんなところで会うなんて……。まぁいいや適当にあしらってさっさと買って帰ろう)
そう思っていた所、急に店員が「すいません」と言いながらを頭を下げた。
「実は、在庫がもうあと1つしかなくて……」
(えぇ……嘘だろー……??)
まさかの事態に、亮は唖然とする。
「な、な、なんですってー!?」
「誠に申し訳ございません。人気商品なもので……」
「まぁ仕方ありませんわね。コホン、村上杏奈さん。ここは私に譲ってもらえませんか?」
いつもならおそらく面倒なことにならないようにはいそうですかと譲るだろう。
だが、病院へ遅れて帰っておきながらありませんでした等と言えば、杏奈に一生口を聞いてもらえないが確定してしまうので、ここは是が非でも譲る訳にはいかない。
「いいえ、神宮寺さんこそ私に譲っていただけませんか? 今すぐ必要なので」
「私も今すぐ必要なんです。なのでそちらこそ譲ってください」
お互い一歩も引かずに、バチバチと火花が散るような睨みあいを続ける。
「いいでしょう。ここは1つ勝負で蹴りをつけましょう」
「しょ、勝負?」
(また面倒な事になって来たなぁ……)
こうして、亮はフルーツゼリーをめぐって対決することになってしまったのだった。
瑞希に連れてこられたのは、高級中華料理店だ。
もしかして大食いやら、早食いなんかでもやるんだろうか?
それなら、少しは得意だから、簡単だなと思っていると、目の前に料理を持ったシェフが現れ机に料理を置く。
「うっ……何これっ!!」
机に料理が置かれた瞬間、目に燃えるような痛みが走った。
置かれた物をよく見ると、ぐつぐつと赤く煮えたぎるフカヒレラーメンのようで、もはや食べ物なのかどうかも分からないくらい赤い。
そして、目に痛みが走っているのは、亮だけではなく後ろにいた恵梨香や麻奈美、そして瑞希のお付きの女子たちもであった。
「今回はこの激辛フカヒレスープをどちらが早く食べられるかの勝負です」
「えぇ……」
辛い物が苦手な、亮は内心マジかよと、うろたえる。
一方で瑞希は辛い物が平気なのか、平気な顔をしていた。
(無理だよ……。ただでさえ俺辛い物が苦手なのに……)
後ろにいた麻奈美や恵梨香に助けを求めようとするが、2人は目を押さえながら、首を何度も振って嫌がる。
「どうしたのですか? もうギブアップしますか?」
(くっそ……。俺がやるしかないのか……)
途方に暮れた亮が、覚悟を決めて自分が勝負に出ようとすると、なんと驚くことに智代が激辛フカヒレラーメンの前に座ったのだ。
「と、智代ちゃん!?」
「つ、栗花落智代様!? なぜ貴方が村上杏奈様の代わりに?」
予想外の展開に、瑞希も驚いているようだ。
「一応、私……杏奈さんのサロンメンバーなので。杏奈さんが困っていたら助けてあげるのは普通でしょう?」
「い、いつの間に栗花落智代様を、メンバーに引き入れて……」
この反応は智代が亮のサロンに入ったことを全く知らなかったようである。
というか智代は、さっきから激辛フカヒレラーメン近くに座っているのに目は平気なのだろうか?
「これを早く食べればいいのですね?」
「勿論……。では始めましょうか……」
お互い割り箸と、レンゲをもってスタンバイする。
そして、瑞希の周りにいたお付きの女子が「よーいスタート」といい勝負が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます