第18話

「メガ盛りキャビアって……」


 キャビアと言えばあの高級食材の事だろう。


 だが少しくらい、お嬢様学校なので、あるとは思うがメガ盛りなんてあるはずがない。


「メガ盛りキャビアなんてある訳ありませんわ。行きましょう」

「そうだね……」


 呆れて2人はその場から離れようとする。


「あら、お2人ともどうしましたの?」


 そこへ瑞希が何人かの生徒を連れてやってきた。


(なんちゅう、タイミングでやってくるんだよアイツ……)


「瑞希さん、こんばんは」

「瑞希様、佳苗先生がメガ盛りキャビアをご所望なのですがどうしましょう?」

「メガ盛りキャビア……?そういえば私のサロンルームの冷蔵庫にあったような……」


(メガ盛りキャビアなんて本当にあるんだ……)


 心の中で突っ込みを入れつつ、その場からそっと離れようとすると、瑞希は「ただ!」と語気を強くしながら言う。


「ただ佳苗先生に、食べさせるだけでは面白くありませんわね」

「どうするんですか?」


 桜がそう聞くと瑞希はにやりと口を緩めた。


「そうだ!村上杏奈さん。私のサロンとどちらがおいしいキャビア料理を作れるか、私のサロンと勝負しませんか?」

「は、はいぃ!?」







「ごめん、こんなことになって……」


 家庭科室に集まった3人へ亮は頭を下げて謝罪する。


「別にいいよ、でもこのキャビアを使って何を作る?」

 

 目の前に用意されたキャビアと、食材を見て悩んでいた。


「とりあえず、この勝負、言ってしまえば杏奈様と瑞希様の勝負ですよね?」

「まぁ……そうだね……」


 機嫌の悪そうな喋り方をする恵梨香に、亮は生唾を飲む。


「杏奈様が、何を作るかを考えてください」

「わ、私が……!?」

「はい、杏奈様が提案したものを、私が調理します」

「わ、分かった!」


 早急に亮はスマホで机の上にある食材で作れるキャビア料理を調べ始めると、隣にいた唯が、恐る恐る手を上げた。


「どうしたの? 唯ちゃん」

「じゃ、じゃあ私、キャビアでデザートを作ってもいいですか?」

「え? スイーツとか作れるの?」

「はい、たまに自分でスイーツとか作ることがあるので……」


 相当自信があるのか鼻息を荒くしながら熱弁する。


「じゃ、じゃあ唯ちゃんはデザート担当で」


 続々と配役が決まる中、ぽつんと取り残されて者が一名。


「ね、ねぇ私は何をすればいいかな?」

「え……えっと麻奈美ちゃんは……」


 どうしよう……。流石に今、調理の工程を手伝わせるわけにいかないし、と悩む。


 少し悩んでいると、ふと閃く。


「え、えっと麻奈美ちゃんは、先生に料理を食べさせてあげたり、介抱してあげて!」

「わかった! そういうのは、私得意だよ!」


 意気揚々とそう言って、座っている先生のもとへ向かった。


(よし……とりあえずこれなら作れそうだな……)


 見つけたのは、パスタとサラダとリゾットで、調理も簡単ですぐに作れそうだ。


 それを恵梨香に伝えると、了承しすぐに調理開始する。


(ふぅ……)


 少し休憩しようと椅子に座ると、突如として、麻奈美と唯が慌てた様子でやってきた。


「た、大変です!」

「ど、どうしたの!?」

「向こうのサロン、一流シェフを連れて来てる!」

「う、嘘!?」


 そう言われて、瑞希のサロンのいる方を見ると、大きなコック帽子を被った女性が、いつの間にか料理を作っているのが見える。


 一流のシェフを雇われてしまっては、こちらに勝ち目はない。


 だが、それでも恵梨香は冷静だった。


「大丈夫です。まだ勝機はあります」


 何も動じることがなく、恵梨香は茹で上がったパスタをフライパンに入れる。


「何か勝てるための秘策はあるの?」


 麻奈美が恐る恐る恵梨香に聞く。


「別に秘策なんてありませんよ? ただ真心を込めて作るだけです」

「は、はぁ……」

「彩香さん、デザートはできましたか?」

「は、はい! もう少しです!」


(大丈夫なのか……これ……?)


 心配する亮や麻奈美をよそに、どんどんと亮の提案した料理が完成していくのだった。

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