第16話

外を見るといつの間にか、もう日が沈みかけていた。


「もう、こんな時間かぁ……」


 4人は残ったスイーツを食べながら、ソファに寝転がっり、スマホをいじったりしていた。

 

「そろそろお風呂入りませんか? この学校、大浴場もあるみたいですよ? 皆で行きませんか」


 お風呂と言う単語を聞いて、亮の顔が青ざめる。


「わ、私は後で行くから、3人で楽しんできてよ」

「な、なんでですか!?」


 頬を膨らました唯が、珍しく声を大にした。


「申し訳ございません……。杏奈様は人前で裸になる事があまり得意ではない方なので……ご勘弁願えませんでしょうか?」


(恵梨香……)


 珍しく恵梨香が、自分を助けてくれたと亮は感動する。


 後は麻奈美が賛同してくれるのを待つだけ……。


「杏奈? 今日は何のために集まったんだっけ……?」


 珍しくまじめな顔をする麻奈美に、一瞬亮はビクリとした。


「えっと、親睦を深めるためだよ」

「だよね、親睦を深めるためなのに、裸の付き合いもできないのはひどいよね……」


 にっこりと笑うが目は笑っていない。


「え……いや……あの……」

「という事で、ここでなんでも言う事を聞かせる権利を使いまーす!」

「わ、私もです!」


 麻奈美に同調して唯も便乗する。


 隣にいた恵梨香へ助けを求めようとするが、恵梨香も打つ手なしのようだ。


「あの権利を使われてしまっては、もうどうしようもありません……。あきらめて腹を括ってください」

「そんなぁ!!」


 こうして、再び麻奈美の策略にはまってしまった亮は3人の女の子と一緒に入浴する事となったのだった。






 

 そんなこんなで、大浴場にやってきた亮は他の3人から離れたところにいたが、なかなか脱げないで呆然と立ち尽くしていた。


(見られていない、今ならチャンスか……)


「杏奈様、どうしたんですか?」

「ゆ、唯ちゃん……」


 脱ごうと制服の手をかけようとしていると、唯がバスタオル1枚の姿で亮に近づく。


(うぐっ……。ゆ……唯、以外と大きいんだな……)


 制服を着ていた時はあまり大きく感じなかったが、小さい体の割には、かなりたわわに実っていた。


(これが着やせするタイプってやつか……)


「あ、あの……服脱がないんですか?」

「あぁ! えっと、もうちょっと待ってね!!」


 動揺している亮を不思議そうな顔で見ていると、そこに恵梨香がやって来て、唯の手を握った。


「唯様、先に行きましょうか」

「は、はい!」


 そのまま2人は大浴場の方へと向かう。


(恵梨香は普通だった……)

「あれぇ? まだ脱いでないのー?」


 ほっと一息ついていると、麻奈美が亮の前に現れる。

 

「麻奈美ちゃん、なんで恵梨香に賛同してくれなかったの?」

「えー? だって、親睦を深めるためでしょ? ちゃんと杏奈と唯ちゃんの親睦を深めなきゃ……」

「そ、そうだけど……俺と入るの恥ずかしくないの?」

「別にぃー?」


 ニヤっと笑いながら、麻奈美は亮のもとへ体を寄せてくる。


(!? 麻奈美……。以外と胸大きいんだな……)


 ぽよんと今にもバスタオルから、こぼれそうになる果実へ釘付けになってしまう。


「何見てるの?」

「ご、ごめん!」


 凝視をし過ぎて、バレてしまったようで、亮は咄嗟に謝るとニコッとする。

 

「そうやって、あんまり唯ちゃんの体を見ないようね。」


 「バレちゃうよー?」と下の方を指さしながら、大浴場へ向かった。


「わ、わかってるよ!」


 顔を真っ赤にしてそういった時には、もういなかった。

 

 もう誰もいないので、亮は早急に脱ぎ、バスタオルを巻いて大浴場にへ出る。


 すると、目の前には大きなスパ施設のような大浴場があった。


 広々とした、浴槽には、50人くらいは同時入れそうである。


 本当にここは学園の中の施設なのかと混乱しそうだった。


(さて、どこで体を洗おうか……)


 3人のもとへ向かおうとするが、全員バスタオルを外していて近づけない。


 しょうがないので、少し離れたところに座る。


「杏奈様、お背中お流ししましょうか?」

「へっ!?」


 座ったと同時に唯がやってきて、ホイッぷるボールを手に持っていた。

 

「あの……ダメですか?」

 

(まぁ……背中くらいなら良いか……)


「ううん、いいよ」

「やったぁ!」


 鼻歌を歌いながら、ホイッぷるボールにボディソープを付けて亮の背中をゴシゴシとこすり始める。


「ど、どうですか? 痛くないですか?」

「うん、大丈夫だよ」

「良かった……。このまま続けますね」


 優しくごしごしと、背中をこすられて気持ちのいい気分になっていた。


「杏奈さんって、すごく綺麗な身体をしていますよね……」

「そ、そうかな……?」


 亮の体を凝視しながら、そう言う。


 あまり男子っぽくない体をしているなとは思ったことはあったが、やはり女子から見たら綺麗な体だと思うのだろうか?


 だけど、こういう風に褒められるのは悪い気分ではない。


「それじゃ、次は前も洗いますね~」

「あー……え?! ま、前は自分で洗うから大丈夫だよ!」

「そうですか……じゃあお背中流しますね」


 心底残念そうな顔をしながら、シャワーで亮の背中を洗い流した。


「それじゃあ、私先に湯舟浸かってますね」

「うん、わかった!」

 

 流し終わった唯は、2人が浸かる湯舟の中へ向かう。


(危なかったぁ……)


 安堵のため息を付きながら、自分の体や髪を洗い始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る