◆#7 特別な関係

 家に到着。

 部屋へ向かう最中に種崎さんは足を止めた。


「どうしたの?」

「今日も家族いないんだね」

「あー、それね。気にしなくていいさ」

「でも……昨日もいなかったよね」

「大丈夫」

「そ、そっか」


 心配する必要はない。どうせ帰ってこないからな。

 気にせず部屋へ向かう。

 カバンを置き、ベッドへ。

 種崎さんを座らせ、俺もその隣に。

 空気が一変して死ぬほど緊張してきた。


「……さっそくいいかな」

「う、うん……。でもちょっと待って」

「どうした?」

「いやー…。思ったよりもドキドキしちゃって」

「そうだな。俺もちょっとヤバい」


 昨日よりも緊張感があった。

 だが、ここで立ち止まるわけにもいかないのだ。

 俺は今度こそ種崎さんを満足させる。


「おっけー…脱ぐ」

「お、おう」


 先に脱ぎ始める種崎さん。けれど、手を止めた。……ん? どうした?


「……ねえ」

「なんだい」

「FC1のことだけどさ」

「うん」

「あれって動画消せないかな」

「いきなりだな。まあ……本人が運営に問い合わせれば削除できると思うけどね。どうしたの?」

「やっぱり怖くなって」


「そうなのか。お金目的だったんじゃ」

「そうだけど~…。ずっと考えていてね」

「なにを?」


「いっそ、二人でえっちなことして稼げばいいんじゃないかなって」


 俺の思考が三秒ほど停止した。

 ……えっと。

 種崎さんはなにをおっしゃっておられるのかな?


 ん~~~~…これは誘われてる?


 つまりあれか。

 俺と種崎さんで“個人撮影”して稼ぐってことかな。そういうカップルがいるらしいことは知っていたけどさ。見たことあるし。


「天才だな! って、アホか」

「だよね……」

「でも、動画削除はありかもな。今となっては良い気はしない」

「なんで?」

「なんでって……。そりゃ、俺が種崎さんのことが好きだから……だよ」

「えっ」


 そう告白すると種崎さんは驚いていた。ですよね。俺なんかから気持ちを打ち明けられてもキモイだけどよな。だから言いたくはなかった。


「すまん。なんでもない」

「ううん。嬉しいよ」

「マジで」

「だってもうこんな体の関係持ってるし。今さらだよ」

「それもそうか……。じゃあ、付き合ってくれる?」

「うーん、考えておく」


 イエスとは言わないんだな。でも、考えてはくれるらしい。そうか、なら今はこの関係のままで十分すぎる。

 彼女が隣にいてくれるのなら。


「期待しておくよ」

「うんうん。期待しておいて」


 などと言いつつも、種崎さんは俺にキスしてきた。……唇だ。

 これで返事してくれないなんて、どういうこと!?


 でも、もう考えている余裕もなかった。


 俺は一気に興奮が高まり、種崎さんを求めた。

 彼女をベッドに押し倒した――。

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