◆#5 授業サボってエロ動画検索

 諦めたのか御堂はどこかへ行った。

 いったい、なんだったんだアイツ。


「あ、あの……新谷くん。守ってくれたんだよね?」

「まあね。そんなところだよ」

「ありがとう。嬉しかった」


 マジか。そんなに感謝されるとは意外だった。

 ほとんど欲望の為に種崎さんをかばったつもりだったんだけどな。でも、嫌な気持ちになったのも確かだ。

 俺は彼女が取られたくないと思った。

 だから、あんな行動に。


 けど、ちょっとやりすぎたかな。

 クラスメイトの視線が痛い。



 いったん席につき、落ち着くことに。授業がはじまって……時間が流れていく。

 もちろん、俺は真面目に授業を受けるつもりはない。

 教科書の下にスマホを忍ばせてFC1-PPVを覗いていく。この緊張感がたまらないぜ……。


 お昼になり、種崎さんがこちらへ向かってきた。


「どうしたんだい?」

「あ、あのさ……新谷くん。まさか、わたしの動画……バラすとかじゃないよね!?」

「え?」

「だって授業中ずっと見てたよね!?」


 あ~、バレていたのか。でも、種崎さんの動画を探していたわけではない。他に誰かいないかなぁなんて淡い期待をして検索していたのだ。


「悪い。ちょっとサボってただけ」

「ほんと? 裏切ったら許さないよ」

「大丈夫大丈夫。種崎さんとはリアルにシてもらえるわけだし」

「ちょ……あんまり大きな声で言わないでよ~…」


 動揺しまくる種崎さん。

 ――しかし。

 それにしても、クラスメイトからの視線が多くなったなぁ。

 今まで俺は陰の者として、まったく注目なんて浴びることはなかった。だが、彼女と関わるようになってから、明らかにみんなの見る目が変わった。


 憎しみや羨望、そんな眼差しが多くなった。


 でも、不思議と話しかけてくるヤツはいなかった。その方が助かるけどね。


 …………?


 なんだ。

 ヤツ等、なにかヒソヒソと話しているような気が。



「ねえ……新谷くんと種崎さんって、あんな仲良かったっけ?」「……なんか怪しいよな」「脅されてるんじゃね?」「そうだよな。そう思うよな」「さっきの御堂くんとケンカしてたよ」「あの御堂を撃退したって話だ」「どんな魔法を使ったんだ?」「あの二人付き合ってるのかな」「新谷ってクソ陰キャだろ……ありえねえ」「絶対なにか裏があるって」「誰が聞いて来いよ」「お前がいけよ」「いやいや、お前がいけって」



 耳をすませば聞こえてくる。ゴミのような会話。

 俺と種崎さんの関係がそんなに気になるか!

 気になるだろうな。

 でも、別に構わんだろ。

 俺と彼女の問題だからな。



「罵詈雑言が。種崎さん、お昼一緒に食べにいこう」

「……そうだね。実はわたしもそう思っていたんだ」

「マジか」


 意外にもノリが良かった。

 てっきり断られるかと思ったんだがな。


 教室を出ると廊下には御堂がいた。またかよ。



「まて! 新谷!」

「ん?」

「てめぇと種崎さんが一緒にいるとか、ありえねぇんだよ……! 俺は認めねえ!」


「お前に認められる必要はない。消えろ」

「んだとおおおおお!?」



 ブチギレる御堂は、俺に殴りかかってきた。

 俺はすぐにスマホを取り出し、ライトを浴びせた。


「くらえええええええ!!」


「うあああああああああああああああああ! 俺の目が、目がああああああああああああああああああああああああああ…………!!!!!」



 スマホのLEDライトは思った以上にまぶしいのだ。

 こういうフラッシュバン的な使い方は十分に可能な光量。とはいえ、所詮はスマホのライト……もって一秒ってところだ。


 すぐに種崎さんの手を繋いで俺は走った。



「いくぞ」

「で、でも……うん。ありがと」



 なぜか礼を言う。なぜだ?


 なんとか御堂を撒いた。屋上前の階段で腰を下ろし、俺は改めて聞いた。



「種崎さん、アイツと何かあったのか?」

「そうなんだ。かなりしつこくてさ」

「あ、そっか。君みたいな美少女、男が放っておかないわけか」

「自分で言うのもなんだけど、そういうこと。最近は冷たく接していたから、嫌がらせもされてた。だから、すっごく助かった。新谷くん、ありがとう」


 天使の笑みを向けてもらえ、俺は嬉しかった。……そ、そうか。そんな事情があったとはな。偶然とはいえ助けられて良かった。


「これからも任せろ」

「へ~、新谷くんって意外と頼りになるんだ」

「意外は余計だ」

「うんうん、頼りになる」


 なんか妙な感じだな。

 でも悪い気はしない。

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