◆#4 FC1-PPV新作えっち動画

 ――翌日。


 ウルトラ賢者モードから回復し、俺は個人撮影した動画を見直した。

 す、すげぇや。

 俺、本当に種崎さんとシちゃったんだよな……。

 まだ信じられないや。

 まるで夢のようだ。

 とはいえ、動画は五分にも満たない。もっと撮っておくべきだったな……チクショウ。

 朝支度を済ませ、俺はスマホを覗きながら学校を目指した。


 FC1-PPVを眺めながら向かうのが日課だった。

 しかし、今月は課金しすぎたな……。

 最近は良作が多すぎるせいだ。

 おかげでオカズには困らないが――。


 ふと眺めていると、なにやら見覚えのある女子が映っていたような気がした。……こ、これはまさか……種崎さん!?


 新作が投稿されていた。

 もちろん、俺の動画ではなく……別の誰かと撮ったものらしい。今回はコスプレか。いいなぁ……。じゃなくて、また上げらているじゃないか。

 一応、教えておいてやろう。



 学校に到着して教室内を探る。

 席にはすでに種崎さんの姿があった。


 すぐに向かい隣の席に座る俺。


「…………っ」


 俺の存在に気づくと種崎さんはビクッっとしていた。なんでそんな怖がるかな!?


「おはよう、種崎さん」

「……お、おはよう。あの、バラさらないでよ……?」


 めちゃくちゃ小声で話しかけてくる。


「もちろんだよ。ただし、俺との関係は継続してもらうよ」

「う、うん……」


 なんだ気乗りしないのかな。

 仕方ない、今朝の動画のことを話してやろう。


「それよりさ、種崎さん。君の新作がFC1-PPVに上がっていたよ」

「え…………ウソ」

「ウソじゃないさ。ほら」


 スマホの画面を見せた途端、種崎さんは顔を真っ赤にしていた。


「そんな……なんで……」

「さあ?」

「……お願いだから広めるのだけはやめて」

「俺はそんな鬼畜じゃないよ。でも、言うことを聞いてくれないと困るかな」

「分かった。分かったから……」


 なんだか困惑しているな。

 この新作の動画は予定になかったということか。無断でアップロードされちゃったのかな。


「じゃあ、今日は学校でシしようよ」

「……そ、それは無理だよ」

「なんで?」

「なんでって。ほら……つけるやつがないし……」


 0.01のことを言っているのか。

 そうだった。

 さすがの俺も今持ち合わせがない。


「生は?」

「最低~」


 なんか白い目で見られた。

 それはそれで眼差しにゾクッとしたけど……やはり難しいか。できちゃったら困るしな。責任取れないし。


 そんな中、クラスメイトの男子・御堂が種崎さんに話しかけていた。


「あのさ~、種崎さん」

「う、うん。どうしたの?」

「えっと――」


 当然だけど今は普通だ。

 でも、俺だけは彼女の乱れた表情を知っている。あの甘い声や激しい腰使い。……そうだ、このクラスの男子共も知らないんだよな。


 俺だけの“特権”だ。


 マイナー動画サイト『FC1-PPV』を課金している学生ヤツなんて俺くらいだろう。偶然が重なり、種崎さんとは関係を持つことができた。


 そうだ、いくら男子共おまえたちが種崎さんに好意があろうとも、俺には敵わないのだ。現実を思い知らせてやる。

 今まで底辺だった俺の本当の力というヤツをな。


「ちょっと止めてくれないかな、御堂くん」


 俺は彼に忠告した。


「なんだよ、雑魚の新谷がよ。別に種崎さんと話してもいいだろ!」

「俺の彼女なんだよね」


「……は? ウソつけ。種崎さんがお前みたいなヤツと付き合うかよ。夢見てんじゃねーぞ」

「ほう?」


 ならばと、俺は種崎さんの頭をなでた。


「……!? ……な、なにを!!」


 驚いたのは御堂だった。

 いや、種崎さんも割と驚いていたが空気を察していた。


「これが現実だよ、御堂くん。なんなら、君の目の前でキスもできる」

「馬鹿な、馬鹿な、ありえないだろ! なんで新谷……お前みたいなカスが種崎さんと!」


 言いたい放題だな、コイツ。

 だけど、これが現実リアル!!

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