『アエリア』と言う名の癒し。それはどこ?

アエリア・ディ・ブライトは、公爵令嬢である。

公爵令嬢でありながら、武勇に富み、魔法に対する造詣も深い。

深紅の髪に、夜空に輝く月のような金の瞳。

風に靡く、長い髪は妖艶とも言える。

ドレスをモチーフにしたかのような騎士服に、巨乳を覆う白銀のブレストアーマー。

なのだが…。


『幼女』

『幼女だな』

『お巡りさん、この人です』


チャット欄が、流れていく。

目の前には、深紅の髪の幼女が砂浜に打ち上げられている。

赤を基調としたドレスには、金糸の刺繡が刻まれている。


『これが『アエリア』?』

『嘘やろ』

『巨乳がナーフされただと』

『YouTubeくんが初心なせいだ』

『おーい、イツキ。目を覚ませ』

『イツキ、SAN値チャックを忘れんな』


俺は、砂浜に膝をつき…崩れ落ちた。


「俺の癒しの『アエリア』たんが…ほんまに『アエリア』になっちまった」


俺は、絶叫した。

その声に、『アエリア』?が肩をビックンとさせる。

そして、むくッと起き上がる。


『こいつ、動くぞ』

『おお、幼女が…幼女が立った』

『お巡りさん、ここに変態が、変態が居ます』


金色の双眸が俺を見る。

吸い込まれそうな瞳。

俺は、固唾を飲む。


「愚民、此処はどこですか」

「…え?」


愚民?

え?『アエリア』たんが俺の事を愚民っていた?

俺の癒しは…どこ?


『愚民!』

『そう来たか』

『国民に愛される騎士姫…その実態は』


「何をしているのです?愚民。

質問に答えなさい」


あー、俺の心が折れそう。

なんで、なんでだぁ。


「…わかりません」


俺が、そういうと『アエリア』は腰に佩いた細剣を抜く。

そして、その剣先は俺の首筋へと宛がわれた。


「どういう意味かしら」

「私も先程目が覚めたばかりです。どこかの島としか」


彼女は、細剣を鞘に戻す。


「では、ここには愚民の貴方しかいないという事かしら」

「はい」

「そう…なのですね」


『アエリア』は、肩を落とす。

いやいや、落としたいのは俺だから。


『幼女が強がっておる』

『推せる、推せるぞ。この幼女』

『てか、イツキ。完凸とまではいけないけど『アエリア』凸したらどうなんのかね?』

『まさか、完凸で巨乳『アエリア』爆誕?』


完凸で、あの『アエリア』になる?

なるほど、無凸が幼女なだけと。

いやいや、運営。

ちょっと、ここにきて土下座。

これは、謝罪案件だろ。


『イツキは、元々完凸予定なんだから完凸しようぜ』

『完凸。甘美な響き』


完凸。そうだよな。

今日の配信は、『アエリア』完凸耐久配信だったな。


「愚民、よく聞きなさい。

わたくしは、ディロセイロ王国 宰相バルカス・ディ・ブライト公爵が娘。

アエリア・ディ。・ブライトよ。

かしづきなさい」


無い胸に手を右手を当てて、そう俺に告げる。

なんか、メスガキ臭?が凄いんだけど。


「私は、イツキといいます。よろしく…お願いします」

『イツキ、頑張れ』

『負けるな、イツキ』

『ファイトだ、イツキ』


なんか、コメ欄に力を貰う。

ありがとう、おまいら。


「そう、イツキね。傍に仕えることを許すわ。

では、紅茶とケーキを用意なさい」

「ありません」

『おっと、我儘お嬢様か』

『ゴクリ』

『お巡りさん』


手持ちであるものなんて、さっきガチャで出た水くらいしかない。

というか、飯…どうしよう。


『よし、いまだ』

『そうだ、いまだ』

『行こうぜ、イツキ』


そうだよな。ガチャを引こう。

きっと、何かいいものが出るはずだ。

てか、物資ってどうやってくるんだろう。

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