第14話「アルシアの現在」
その日の夜……。
村長が用意してくれた宿の部屋で、私はお風呂から上がったニーザちゃんの髪をブラシで梳かしながら、最近あった事をお互いに教え合っていた。
「んげ。アンタ、聖者なんかに会ったの?」
「はい。フレスさんのお師匠様というだけあって、凄い人でした。ニーザちゃんの方はどうですか?その、アルシアさんと……。」
いつかのセシリアさんの事を思い出しながら、少しは何かあったかな?と僅かな期待を込めて聞いたけれど、ニーザちゃんは微妙な表情で頭を振った。
やっぱりか………。
「………全然駄目。こないだなんか、アタシの攻撃防ぎつつ、遠隔操作でバフォロスを操って特異魔族倒しながら、魔獣の浄化までして逃げてったし。」
「………化け物ですか、あの人。」
「あやつは昔からくだらない事に関しては器用に立ち回るからな……。」
私が呆れたように返すと、フェンリルもげんなりした顔で頷いた。
ただ、それを見たニーザちゃんが慌てた様な顔でフォローを始める。
「で、でもね?いつも逃げてる訳じゃないのよ。こないだも、町の前で待っててくれて、一緒にご飯食べたりしたし!」
「じゃが基本は逃げてるのだろう?」
「そうだけど……。もう少しアルシアの好きにしてほしいな、ってのもあるし。それに……、気にしてないフリして、やっぱり身体の変化には戸惑ってるみたいだから……。」
「……………。」
自分の気持ちを漏らしながらも、アルシアさんの身体の状態を心配するニーザちゃんの言葉を聞いて、私とフェンリルは口を噤む。
アリシアさんがいなくなって少し後、一度王都にまで戻ってきたニーザちゃんが教えてくれた事がある。
アルシアさんの身体は、2割ほど人間では無くなってるのだと。
アダムの書との同化や、身体に神の力を降ろす神域召喚、2度に渡る神殺し……。
そして、私達は詳しくは知らないけれど、世界の全てを生み出した神様に3度も会ったこと……。
それら全ての要因が合わさって、アルシアさんの身体は現在、一部が神の力と入れ替わっているのだとか。
現在起きているのは、体の成長が停止……。
不老の身体になっているらしい。
デリケートな話題だったかな、と少し反省しかけたのだけど、大袈裟だとニーザちゃんは笑う。
「いいのいいの。アンタ達はそこまで気にしなくて。アイツ、気にしてるのは事実だけど、アリス達にはこれをネタにしとけば暫くは好き放題やれるだろう、って思ってるみたいだし。というか言ってた。」
「…………………。」
私とフェンリルは同時に影のかかった笑みを浮かべる。
うん。あの人は一回シメた方がいいかもしれない。
いや、シメよう。裁きの戦鎚を2発くらい叩き込んでもいいよね?
ちょっとでも可哀想と思った私達がバカだった。
私とフェンリルはにっこりと暗い笑みを浮かべたまま、ニーザちゃんに向き直る。
「な、何、2人とも?」
「あのね、ニーザちゃん。今度ね?」
私とフェンリルは若干引いてるニーザちゃんにある計画を話した。
すると、引き気味だったニーザちゃんの顔が満面の笑みに変わり、私達に抱きつく。
「ありがとう、2人とも!それなら明日の仕事も尚更頑張らないとね!」
本当に嬉しそうに笑うニーザちゃんを見て微笑みながら、私は明日の事と、いつか来るであろう日の事を考えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます