第3章「トゥーヴァの狐と猫」
第12話「白い狐と青い猫」
夏の暑さが遠退き、少しずつ涼しさを含んだ気温になった道を、私達は歩く。
少し離れた位置にある森を見ると、葉は黄色や茶色に染めていた。
それを見て秋になったのだな、と実感する。
すると、不意に横から声を掛けられた。
「アリス、どうかしたの?」
少女の姿をしたニーザちゃんが、その赤い瞳をぱちくりと瞬きさせて私を見ていたので、私は静かに微笑む。
「もう秋なんだな、と思っただけですよ。本当に、いつの間にか半年も経ってたんだな、って。」
「そっか、人間だと半年でも大事な時間だもんね。アタシ達はあって無いような物だけど。」
「そうじゃな。ただ、目覚めてからのここまでの時間は短くも、中々濃いものじゃったな。」
「そうねぇ……、あれだけで100年分時間経った気分だもん。」
仲良く話してる2人を見て、私は少しだけ懐かしい気持ちになる。
今回の魔獣調査はニーザちゃんも付いてきてくれる事になったのだ。
付き合いは少しだけ長い方なのかもしれないけど、実のところ、みんなと旅した時間は驚く程短い。
こうやって一緒に歩けるのはやっぱり嬉しいし楽しかった。
暫く3人で平原に伸びる道を歩いていると、今回の目的地であるトゥーヴァの村が見えてきた。
それと同時に、私達の表情が引き締まる。
「いるわね。」
「その様じゃな。」
2人が臨戦態勢になり、私がスヴェールドを構えた時だった。
村の方から3頭の魔族がこちらに向けて走ってきたのだ。
黒い狼型の特異魔族、ダーク・ウルフだ。
ダーク・ウルフは私達を見て何故か一瞬慌てた後、いきなり
私は走り、向かってくる火球の前に立つ。そして……、
「やあぁっ!!」
向かってくる火球を躊躇いなく足に装着したクリンゲで思いっきり蹴り返した。
ダーク・ウルフもまさか蹴り返されるとは思っていなかったのか、飛んできた火球に直撃し、爆炎に包まれる。
ダーク・ウルフは身体が煙に包まれながらも、それぞれ別方向に散っていった。
「よし。」
「……アリスもなんか、変な方向にぶっ飛んでくわね。」
「火球くらいならいいじゃろうに。妾なんか目の前でホーリー・ストームを蹴ってるとこを見たのじゃぞ。」
「……今度から手合わせするときは魔法とか使わない様にした方がいいのかしら。」
火球くらいなら問題無いと思ったのに、フェンリルに続いてニーザちゃんにも引かれてしまって、ちょっと凹んでしまいそうになる。
そんな時だった。
村の方から、もう一つ、いや……2つの反応がこちらに向かってくる。
2つ目はまだ遠いけれど、1つ目はもうすぐだ。
1つ目の反応が目の前にやってくる。
白い狐型の魔獣、ムーン・フォックス。
彼は私達を見たあと、一瞬警戒して口に咥えた短剣を構え直したけど、私達に敵意が無いと知ってか、それもすぐに収めてしまう。
そこで彼が来た方角から、もう一つの反応がやってくる。
「待ってくださーい!」
「………っ!」
可愛らしい女の子の声が響いた。
ムーン・フォックスはその言葉を聞いたあと、顔を顰めて、そのまま何も言わずに何処かへ走り去ってしまった。
入れ替わる様に、白藍色の猫の魔獣、シー・キャットが私たちの前に現れ、ムーン・フォックスの去った方向を見つめ、眉を下げて溜め息を吐く。
「また、言ってしまわれました……。」
「貴女が、村に住んでる魔族でいいんですよね……?」
シー・キャットは私達を見てきょとんとしたあと、その顔を綻ばせた。
「はい!貴女達が、トムお爺ちゃんとマーサお婆ちゃんの言ってた方ですね!」
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