第6話「二種類の魔族」
今から1年前の……、あの日から2ヶ月後。
ファルゼア王国は2000年前、大規模侵攻の真の元凶であり、この時代に特殊な魔族…………、強化魔族と暴走魔族を生みだした存在、名も無き悪神にまつわる情報を映像魔道具などを通して、大陸に住む全ての者達に公開した。
そしてその存在は、特殊な方法で一時的に復活した戯神ロキ、炎神スルトと、本人達たっての希望で名は明かせないが、勇敢な者達の活躍で退治されたとも。
……まあ、城や王都に住む人達には、その匿名希望が誰なのかはあっさり分かったみたいだけど。
私も、学校の友達に「アリスもそうでしょ?」とバレバレだったし。
でも、それは置いといて……。
陛下曰く、元々その時期に公表する予定だったみたいだけれど、そうせざるを得ない理由がもう一つ出来てしまった。
その理由こそが、私が昨晩戦った魔族、トイフェルと、村人達を守りながらトイフェルと戦っていた魔族達の事だ。
私が療養期間を終え、フェンリルと悪神を倒した事で発生するかもしれない、この世界への影響調査を始めてすぐの頃に彼らみたいな魔族は現れた。
初めは倒したはずの悪神が最後に蒔いた災厄の類かと私達は思っていたけれど、どうにも違う。
今まで、ある程度の自我や知能を持った強力な魔族は確かにいたけれど、今回のそれは明らかにそれを上回っていた。
人間や亜人種並みに明確な知能や自我を持ち、悪意を振り撒く者。
それが前者の魔族……。
これだけならば、出てきてもただ倒せばいいだけだったかもしれない。
しかし、問題は後者の魔族……、これが私達が頭を悩ませた最大の原因だ。
こちらの魔族も確かに前者の魔族と同じく、明確な知能や自我を持ち、今までの魔族よりも強力だが、明確な違いがあった。
どういう訳か知らないけれど、人間に敵意を見せない。
そればかりか、昨日のアンファ村の個体のように人間を守りながら戦ったり、地域によっては人間や、ドワーフ族のような亜人種と共存している個体までいる。
私達は一度、王国からの要請でニーザちゃん……、グレイブヤードの魔王の一人であるニーズヘッグにも着いてきてもらって、ある村に住んでいる魔族の検査をさせてもらった事がある。
勿論、その村に住む人達や、検査をさせてもらう魔族に許可を取ってだ。
結果、彼らは身体の構造こそ負の念によって生まれた魔族のそれだったけど、性格や行動概念などの性質に悪性は一つも存在しない新たな種という事が分かった。
ただ、身体の構造は従来の魔族と変わりがないので、念には念をと、ニーザちゃんが専用の魔法を生みだし、悪性のみを浄化して、無害な存在へと変えさせてもらってはいるが……。
同時期に生まれた、二種類の魔族……。
ファルゼア王国政府はギルド組合上層部と、同盟関係にあるグレイブヤードの現魔王の2人と各亜人種の長達も含めて一同に会し、協議の結果、この二種類の魔族を「特異魔族」と「魔獣」と命名。
悪神の情報と共に、こちらの情報も国中に公開する事となったのだ。
そして、その二種類の魔族へ対処する為の組織が、ファルゼア王国軍、ギルド組合、グレイブヤードの3つの勢力の下、新設される。
それが今、私とフェンリルが身を置いている組織、「ヴァルコアピラの乙女」だ。
そして、その組織の実動部隊のリーダーというのが………
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