第1章「あの日から1年後……」

第5話「国王とギルド組合会長」

悪竜トイフェルの討伐、ゾルダートゴブリンの浄化作業を終えた翌日の昼。

私とフェンリルは王都に存在する、ギルド組合の会議室に訪れた。

そこにいる人物に敬礼の為に膝を付こうとしたけど、寸前でその人物に止められる。


「リアドール君まで止めてくれ。折角お忍びで王都に来ているんだから。それに、1年前はもう少し普通に話してくれたろ?」

「そうですけど、相手は国王陛下で、今は私も一応は国軍の扱いですし……。」

「真面目だねぇ………。もう少しアルシアを見習ってもいいと思うけど……、」

「ロキもそうじゃが、汝は王としては緩すぎじゃな。フリード。」


困ってる私を助けるように、フェンリルが呆れながら話に入ってくれた。

私は改めて、会議室の奥に座る人物を見つめる。


彼の名はフリードリヒ・フォン・カーラー11世。

この国の国王で、私が現在、仕えている方だ。

王様だけど堅苦しいのが苦手らしく、親しい人達には立場を気にせず接して欲しいとお願いする変わった人でもある。

フェンリルが口にしたフリードというのも、彼の愛称で、私もそう呼んでいいと言われてるけれど、そんな畏れ多いことは出来ないので私は未だに陛下と呼ばせていただいている。


そして、フェンリルに同意する様に、陛下の近くにいた女性が口を開いた。


「そうよ、フリードリヒ。フェンリルさんの言う通り、アンタは緩すぎ。もう少し威厳持ちなさいよ。」

「そういうエーヴィは僕の事、職場の同僚感覚で見てるよね?」

「なら変えてあげましょうか。我が国の偉大なる王、カーラー陛下?」

「………エーヴィは今まで通りでいいかな。なんかゾッとしたし。」

「引っ叩こうかしら、この男。そんな事よりも………、お疲れ様、2人とも。あんな深夜に出動要請出してごめんね?」

「平気ですよ、ベルマン会長。村や村人、冒険者の方、ゾルダートゴブリンの子達の事とか、事後処理は王国軍の方達が引き継いでくださいましたし、報告も今日で良いと仰ってくれたので。」

「まあ、それも……、アタシとフリードリヒの時間が合うのがこの時間しか無いってのもあるんだけどね……。」


申し訳無さそうにしている目の前の女性に何も問題はないと私は笑顔で返した。

彼女はエーヴィ・ベルマンさん。

今私達がいる建物、ギルド組合の会長をされている方だ。

この国の国王と、ギルドのトップ………。

そして、グレイブヤードに棲む下界の護り手であるフェンリルと、一応まだ学生である私……。


そんな4人が、何故王都のギルド組合の会議室にいるのか……。

それには色々と理由があった。

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