第3話「燃えさかる村の竜とゴブリン・3」
トイフェルの尾が横薙ぎに高速で迫る。
私はそれを結界魔法で受け止めた後、その尾の上を走り、胴体に迫る。
ただ、この竜も馬鹿ではないらしい。下手に振り落とす様な真似はせず、軽く尻尾を上に上げて、乗っている私を自分の胸の前に来るように跳ね上がらせた。
「喰らえ!!」
トイフェルが前脚で宙を漂う私を殴ろうとするけど、私はスヴェールドを握り込んだ右拳にホーリー・ストームを乗せて、その前脚を殴り返した。
「ば、化け物か貴様!?」
「……………。」
ホーリー・ストームの風によって倒れたトイフェルの叫びに文句を言おうとして、唇を噛む。
たしかに、あんな巨体を拳一発で殴り倒して、一般人とは口が裂けても言えないか、と。
私が微妙な気分でジト目を向けると、トイフェルは加速魔法を発動していきなり上空に飛び上がり、村全域に合わせたブレスを吐こうと構えていた。
悪竜は笑う。
「クハハハハハハハ!このトイフェルの全力の一撃、如何に貴様の様な化け物であろうと避けられまい!まあ、仮に避けられたとて、この村は避難してる人間やゴブリン共々消し飛ぶだろうがなぁっ!!」
「小物の吐く台詞の自覚はあるのかな、あの竜……。」
言ってる事が完全に小悪党か三下の台詞だったので、思わず口から溢れた。
いけない、いけない。
とは言え、彼の言うことは本当だ。
私やフェンリルより弱いというだけで、あの竜は十分強い。
一度軽く暴れれば、村や町を容易に破壊する災害級の魔族の頂点には違いないのだ。
まずは、あの竜の息吹を先に消し去ってから倒そう。
私はスヴェールドで光魔法を起動して、構えるとトイフェルは私が魔法を発動するより早くブレスを放った。
魔素を焼きながら、空を埋め尽くすほどの火炎に私は敢えて接近しながら、杖に込めた魔力を解き放つ。
「ホーリー・テンペスト!!」
私の叫びと共に、杖に込められた光の嵐が特異魔族の放ったブレスを引き裂きながら消し去り、トイフェルに迫った。
光の嵐はトイフェルの動揺さえも、その身体ごと呑み込み、停滞する。
でも、それだけで終わらない。
私はスヴェールドをホルスターに収めた後、遠い祖先の残した聖杖を収納魔法から抜き放ち、相棒であるフェンリルの力を纏わせる。
聖杖はその形を渇いた音と共に氷の槍へと姿を変え、私はそれを片手で逆手に構えた後、投げ飛ばすと共にその力の名を叫んだ。
「
放たれた氷槍は加速魔法によって更に加速し、槍の向かう先、トイフェルとホーリー・テンペストに直撃し、瞬時に纏めて凍りつかせた。
私はトイフェルが身体の芯まで凍結したのを確認して、右手をそこに向けて握り込む。
「
ぴしり……と、けれどすぐに上空の氷塊全体にヒビが入り、それは粉の様に崩れ去っていく。
生命反応は無い。
恐らく、あの竜は自分が死んだ事にすら気付いていないのではないだろうか。
私は念話を起動して、先程冒険者の人達や、逃げ遅れた親子、ケガを負った特殊な魔族を背に乗せ、この場を離れているフェンリルに繋ぐ。
「フェンリル、報告にあった特異魔族の討伐完了。………うん。すぐにそっちに行くね。」
私は討伐完了の報告をするのと同時に、避難した人達の状況を聞いて、すぐにそちらに向かう事にした。
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