四十三 父と子か



「世の中、どこの誰が親類か分からないもんだね。このあいだ、カラスとホオジロ(小鳥の一種)が親子だと知ったよ」

 なんて言う人がいた。


「それは、いくらなんでも嘘だろう」

 と疑うと、


「いやいや、間違いないよ。ほかでもない、俺がこの耳で聞いたんだ。


 十日ほど前、カラスがうちの庭で遊んでると、そこにホオジロが来て、それからハトも来た。


 そのホオジロがね、カラスを見て『チチッ、チチッ』て鳴くんだよ。

 カラスも嬉しそうに『かァ、かァ』と呼ぶ。

 するとハトは、『うん、そー。うん、そー』って二人の関係を認めたんだ。

 こりゃもう、まぎれもなく親子じゃないか」



 世の中の 親に孝ある人はただ

 なににつけても 頼もしきかな

  ――親当ちかまさ蜷川にながわ新右衛門しんえもん

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