四十二 降らない雨乞い


 ある夏のこと。

 何日も雨が降らないので、百姓たちは日照りを嘆いていた。


 そこで雨乞いをしようということになった。

 氏神うじがみの神社の前で風流ふうりゅう踊りをして神に願う。

 だが、やはり一滴も降ってこない……


「いつもならこれで降るのに。おかしいなあ……」

 などと話し合っていると、頭の固い老人が、深くうなずいて言った。

「ワシは今回の踊りがまったく気に入らなかった」


「何がいけなかったというんだ?」


「まず太鼓を『レツケレツケ、テッレツケ』と打ち。

 鐘を『天気テンキ天気テンキヤ』と叩き。

 しまいには笛を『日和ヒヨリヤ~日和ヒヨリ~』などと吹いたのだ。

 雨が降るわけがなかろう!」

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