丗 オオカミどし生まれ



 あるところに、いささか偏屈な老人がいた。

 年齢をひた隠しにしていて、「何歳?」と問われても絶対に言わないのだ。


 そこで、ある男が一計を案じた。


どし生まれの人には果報(幸福)があるらしいよ」

 と、世間話を装って、指折り数えてみせる。

「えーと、どし生まれの人は、まず4歳だろ、次は16歳、28歳……

 ところでご老人、あなたは何歳なにどしです?」


 老人は、自分も果報のある人に含まれているというのが嬉しくて、つい口を滑らせてしまった。

「ワシもどしだよ」


 かかった! と男はほくそ笑み、すぐさま歳を数えた。

「じゃ、あんたは64歳だね!」


 あ、やられた! と後悔しても後の祭り。あんなに隠していた年齢を、あっさり知られてしまったのだった。


 このとき騙されたのがよほど悔しかったのだろうか、また別の席で「何歳なにどしか」と訊かれたとき、老人はこう答えたそうだ。


「ワシはおおかみどしだ!」

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