廿六 平林



 文書の上書うわがきに『平林』と書いてあった。

 これを通りすがりの出家僧に読ませてみると、


「はて、なんと読むのかな?

 平林ひょうりんか、平林へいりんか、平林たいらりん平林ひらりんか、一八十いちはちじゅう木木ぼくぼくか。それも違うなら平林ひょうばやしかな」


 これだけ細かく読み方を挙げているのに、平林ひらばやしという名字に思い当たらないのだ。

 推量というのは、とにかくアテにならないのう。

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