廿三 秘密の種



 ある農夫が畑を耕していた。


 隣村の百姓が通りかかって尋ねた。

「なんの種をまくんだい?」


 農夫は隣村の百姓を手招きした。

「あっ、声が大きい。小さく、小さく」


 隣村の百姓は、

「ははあ。誰かに聞かれたらまずいってことか。さては世にも珍しい唐物からもの(輸入品)の種でも植えるんだな? 分かったよ」

 と、近くに寄って行った。


 すると農夫は、小さな声でそっとささやく。

「……大豆をまいてるんだ。鳩に聞かれたら食われてしまう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る