第52話 双子の日々
――――新たな家族を迎えつつも、竜皇妃の仕事に錬金術師の仕事、たくさん抱えつつも、いつの間にかうちの双子も成長し、3歳になっていた。
「にーに」
ロロナは今日もリファにべったりである。
しかし最近、番と言う言葉を覚えたロロナは……。
「れーちゃ、れーちゃ」
そう、ついつい呼んでしまう。れーちゃと言うのはククルとロイドのところの双子の弟レン王子のことで、どうやらロロナの運命の番らしい。レン王子もロロナが好きらしく、ふたりを合わせるととても幸せそうにしているのだが。
「つぎ、いつあえる?」
「そうですね……それは……」
リファがこちらを見る。
「そうだなぁ……次は建国祭かなぁ……」
王女は後継者だからククルと自国での参加だが、レン王子とロロナはなるべく会わせてやりたいと言う双方の親心で、ロイドが挨拶がてら連れてきてくれるのが通例だ。俺たち夫夫も里帰りの時は双子を連れて、フォレスティア城ではロロナたちを会わせてあげている。
もう少し大きくなったら互いの国に留学……ってのもありかもなぁ……。
「けんこくちゃい……!ろろな、まいおぼえるの」
「うん、一緒に練習しようね」
俺とリファたちが毎年建国祭や催事に舞を披露しているからか、近頃はロロナとセシナも興味を持ち始めていて、双子も舞に参戦すると、その場が大盛り上がり。双子も今やすっかり竜皇城のアイドルだ。
無論、双子に心無いことを言うやからは徹底的にちょうきょ……説教するが。
家ごと潰して国外追放にすれば簡単だが、それではそう言うやからが、国外の混ざりものたちに狼藉を働くから……。そうではない対話や理解してもらう場や時間も、ちゃんと設けなければな。
……ま、でも近頃は、錬金術師たちの活躍もあり、混ざりものだの何だの関係なしに、双子のことを好きになってくれるひとも増えたし……。
それから、リファとラシャのところにも子が生まれたから、うちの双子の片割れのセシナは……。
「せーちゃ」
「そうだよ、タシャ」
セシナをかわいらしくせーちゃと呼ぶタシャ……リファとラシャの息子と仲良く遊んでいる。
タシャの方が年下だが、幼馴染み兼、セシナの番としてよく遊びに来てくれるのだ。
まぁ、そう言った幼馴染み……のような存在は、国外ではよくあることだ。
乳母兄弟とも呼ばれるが、リファとロロナ、セシナの場合は兄弟だな。
因みに、竜人は実の兄弟や実の叔父姪などでなければ、婚姻は可能である。
リファは既にラシャの元にお嫁に行っているので、セシナとタシャはどちらの家に婿入り、嫁入りするに関わらず、縁を結ぶことができる。
さすがに戸籍上の兄弟や、近すぎる近親関係だと、一度違う家に養子縁組をする必要がある。リファが俺たちの養子になったようにな。
ま、子孫ができにくい竜人ならではの寛容なところだ。
それと同じように、もっと寛容になっていい。例えば竜皇の後継者たちに、乳母兄弟や幼馴染みを作ってあげる……と言った感じでな。
「私の時は、幼馴染み……と言う存在はいませんでしたから……少し羨ましいですね」
執務の合間に様子を見に来たリューイが呟く。
そうか……竜皇とその後継者はいつでも特別だったから……。幼馴染みや乳母兄弟と言う存在もいなかったのだ。
「それから、竜人は長寿ですから」
「子孫を作るのも大変だから……幼い頃に年齢の合う子が必然的に少ないのだろうな」
長い人生で、友と呼べるものはもちろんできるだろうが……こうして幼い頃から縁のある友がいるのは多分……これから長い時を生きる上でも重要になってくるだろう。
特にセシナにとっては番でもあるから。
「だなぁ……。でもさ、それって国外でもいいわけだろ?」
「……っ、それは……」
リューイがハッとする。
「ロロナにとってはレン王子は番だが、王女はロロナとセシナにとってはまごうことなき幼馴染みだよ」
「確かに、そうですね」
そして王女もまた長命種であり、ロイドの血を継いでいるから、普通のエルフよりも長寿のはずだ。だから双子と長い時を生きる友である。
だが……。
「東国や、獣人の国の王子王女とも、交流を持てるといいなぁ」
短命種と長寿種、寿命の違いはあるものの、成人まではたいてい成長速度は同じである。
東国なら代表団に年の近い王族を紹介してもらえばいい。獣人の国ならキャシーを通して紹介を頼もう。あそこは王が代替わりして、今はキャシーの兄が継いでいる。
獣人は人間と同じく繁殖能力に優れているはずだから、恐らく遠くないうちに次代の王族が誕生するだろう。
「もう、竜皇や竜皇子が孤高でいる時代は、終わりでいいと思うんだ」
リューイもリュージュさまも……あいつも、ずっとずっと孤独だった。番に出会うまで、ずっとずっと……。だからもう、双子にもその子孫にも寂しい思いはさせたくない。
世界のトップなんだから、せめて、この世界を愛せるように。
家族や友を作ってあげたいと思うのも、親心だろう……?
俺の考えを感じ取ったのか、リューイが笑顔で頷く。
「はい、私もそう思いますよ」
そうして、仲良く遊ぶ子どもたちを眺めながら……。
子どもたちの健やかな未来を、願うのだ。
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