第42話 フォレスティアからの報せ


俺たちが竜泉郷から帰って以来、竜泉郷の観光地化は、東国の代表団を交えて絶賛進行中である。

まずは各国の代表団を招いた際に、勧めてみてもいいかもしれない。


そんな中届いたのは、とてもおめでたいニュースであった。


「……ククルが……っ!?」

「クロム、どうしたのですか?」

隣で執務をしていたリューイが驚く。


しかしまずは俺に連絡してくるところは……兄貴だな。ちゃっかり注文書混ぜてあるし。


「リューイ、ククルが懐妊したそうだ」

「……それは……っ、おめでたいですね」

リューイは驚きつつも頷く。


「長命種は子ができにくい」

子宝に恵まれれば必ず皇子がひとり生まれる竜皇族とは違う。

それでも、竜皇族は必ず生涯にひとりだけ子孫を残して次代に繋ぐ。しかしほかは……子孫を繋げないこともあり、その際は親類を頼り、抜擢するしかないが。


「他種族となら、確率は上がるが」

「しかし、悲しい歴史も繰り返されて来ましたから」

「そうだな……」

リファもリリィもその被害者だ。


「ロイドなら、ククルも子も守る力があるが……」

絶対ではない。


「俺たちも、頑張らないとな」

ロイドとククルと、それからその子が生きていく世界のために。

ロイドは竜とエルフの混血だが、子が生まれればどう出るか分からない。もしかしたらハーフエルフのような見た目になるか、隔世遺伝で竜の特徴が出るか……。


「その子が相応しくないと抵抗するハイエルフはいないだろうが」

ハイエルフ自体、今はほとんど残っていない。父さんと兄貴、ククル、それから俗世を離れてほとんど姿を見せないものたち。

今の長老たちも、ハイエルフに近いとは言え、ハイエルフ自身ではない。

だからこそハイエルフに憧れ、神聖視する。

だがハイエルフは知ったこっちゃない。リリィの母の悲劇を、みな知っているからな。


「ハイエルフ……ですか。シュルヴェスターさまとルーンさまと、ククル女王以外には……ほとんど知られていませんね」

「そうだな。ほんと……もうハイエルフなんて純血、守る必要ないんじゃないかってほどだ。むしろ……そう思ってるんじゃないのかな」

「それは……どうしてですか?」


「エルフたちがハイエルフを崇めすぎたせいで、とあるハイエルフが命を絶ったからだ」

「……それは……」


「だから、ハイエルフはただのエルフになりたいんじゃないのかな」

恐らく兄貴も、同じ気持ちだ。


「それでもなれないから」

俺がエルフにも人間にもなれないように。


「俺に未来を託してくれたのかもな」

家族として、兄弟として、守ってくれた。


「俺もちゃんと孝行しないとな」

「その時は私も一緒ですよ」

「そうだな」

ふたりで歩むと決めたのだ。



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