第3話 存亡の危機(NG:不遇にあっても諦めないキャラ)
「そういえば部長、他の部員って部活来ないんすか?」
今日も今日とて、部室には部長の
「他の部員は主戦場がWebなの」
「Web……? インターネットってこと?」
「そうよ。昨今はWebで何でも済んじゃうから。昔は公募や同人誌が主流だったけど、時代よね」
「こうぼ……? どうじんし……?」
「そう。今みたいにインターネットが存在しなかった時代は、自分の作品を読んで貰うだけでも一苦労だったのよ。つまり、今は恵まれてる。……文芸部の衰退の一因でもあるのが、悔しいけど」
溜息を吐く鑪に、田畑は首を傾げた。
「何でWebで何でもやれると文芸部が?」
「……リアルじゃないところで仲間を作れるようになったから。部活なんかしなくても、創作仲間が簡単に作れちゃう。しかも、正体を明かす必要もない。だからかなって……これは、私個人の見解だけど」
寂しげに窓の外を眺める鑪。
綺麗な横顔だと、そんなことばかりが田畑の頭を巡っていた。
「――隠れ物書きは大量に居るはずなんだけどね。なかなか姿を見せないの」
「隠れ……?」
「要するに、こっそり創作活動してる人。スマホとかパソコンとかで、誰にも知られることなく小説を書いてる人よ。昔はイラスト系のオタクなんかも文芸部によく混じってたものだけど、pixivとかTwitterとか、そっちで済んじゃうからか、全然姿を見せないの。そういう子、田畑君は知らない?」
振り向いた鑪の顔にドキンとしながら、「知らないっすね」と田畑は言った。
「そもそも、ピクナントカ? 初めて聞きました。Twitterはやってるから知ってます」
「へぇ。Twitterで何見てるの?」
「ネタ動画」
鑪は目を細くして、小さく頷いた。
「まぁいいわ。とにかく、私達三年生が卒業したら君一人になるわけだから、ちゃんと仲間を見つけるのよ?」
「仲間……? 何の仲間っすか?」
田畑が目をぱちくりさせるのを見て、鑪は首を傾げた。
「文芸部の」
「え? もしかして俺が部員勧誘しなくちゃとか……」
「そうなるでしょ、必然に。私達、文化祭で引退だし」
へぇ、そうなんだぁと、田畑は言った。
初めて現実を突き付けられたらしく、少し困ったような顔をする。
が。
「……やんなくても、いいかな」
「は?」
「部員勧誘要らないかなって」
「どうして? 文芸部存亡の危機よ?」
「部長が引退したら、俺も多分やめるんで」
……鑪は忘れていた。
田畑は創作活動に興味がない。鑪に興味があるのだ。
「それまでに、君が創作活動に目覚めたら面白いけどね」
フッと笑う鑪の、気の抜けたような顔が田畑をキュンとさせた。
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