「鍵」★★★★★★★★★☆

〇収録「妄想銀行」


〇評価(10点満点)

 アイデア:4(5点満点)

 文章  :5(5点満点)

 合計  :9


〇あらすじ

 ある夜、男はふしぎな鍵を拾った……


〇寸評

 星新一といえば、この作品であろう。彼の経歴にも、代表作として載っている。

 文章は完璧。これぞ、星新一の文章。対象のことを拒絶しているわけではないが、常に一定の距離を取りつづけ、傍観(観察)している。感情を抑えた星新一流の冷めた文章の極致。キラリと光るフレーズが各所に散りばめられてもいる。冒頭部分もよい。

 対して、アイデアのほうだが、これも実におもしろい発想である。しかしながら、鍵に合う鍵穴を探し回るに至る動機付けの説明が弱いように、私には思えた。途中からは文章のよさのため、その点は気にならなくなるが、最初の方は読んでいて、多少、物語に入り込みづらい。5をつけてもよかったのだが、31編を選ぶという目的を考えれば、厳しくふるい落としをかけていかなければならない。

 何にせよ、まずはご一読あれ。

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