前のエピソード――「鍵」★★★★★★★★★☆

〇収録「妄想銀行」

〇評価（10点満点）

　アイデア：５（５点満点）

　文章　　：５（５点満点）

　合計　　：10

〇あらすじ

　あらゆる味を口内にもたらしてくれる「味ラジオ」……

〇寸評

　みんな大好き「味ラジオ」。星新一フリークで、この作品を嫌いな人はいないんじゃないかな。

　アイデアは、現在の視点から見ても、未来性があり、「ああ、こういう時代が来ないかな」と思わせてくれる。

　アイデア勝負で、文章がそれにふさわしくなくても、読むに値する作品というものもあるが、これは、アイデアだけではだめで、文章で読み手を楽しませなければならないたぐいの作品である。そして、その点で成功している。あと、ネーミングセンスが抜群。味ラジオですよ、あなた。一読しただけでおぼえてしまうし、興味をひく名付けだ。

　星新一らしいアイデアと彼らしい文章のマリアージュ。ぜひ、お楽しみください。

　非常にあらすじが書きづらかった。

　最後に補足だが、星新一の文章は細かい描写をさける傾向にあり、それは食べ物についても言えるのだが、ふしぎなことに、彼の食べ物系の話を読むと、おいしそうで、お腹が空いてくる。なぜだろうか。自分で考える余地が大きく、逆に想像力を刺激するからか。これは小説を書く人の参考になるのでは。