「美味の秘密」★★★★★★★★☆☆

〇収録「妄想銀行」


〇評価(10点満点)

 アイデア:5(5点満点)

 文章  :3(5点満点)

 合計  :8


〇あらすじ

 その小さな食堂で無造作に作られた料理は極上の味だった。その秘密とは……


〇寸評

 すばらしいアイデア。これぞ星新一といった作品。この話を思いついたとき、星は小躍りしたことだろう。

 特筆すべき点はないが、文章にも問題はない。


 「妄想銀行」を読んでいると、アイデアはユニークなものが多いのだが、前期の良作たちに見られた、文章のおもしろさが減じている。マンガ家がキャリアを積んでいく中で、線が少なくなっていくのに似ている。どう言えばいいのだろうか、文章が整い過ぎていると書けば、通じるだろうか。整ってはいるが深みはない。アイデアのじゃまはしていないが、沿ってはいない。「こう書けばよいのだろう」という油断が少々見える。文章に生気が足りない。固定化されている。「こういうときはこういう表現」と。読みやすいが、読者を楽しませる工夫が足りない。

 だが、この過渡期を突き抜けて、中後期に星新一の文章は完成される。

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