第二章 出会い

第一話 エルフを拾う

(1)

「あーあ、かったるいなあ」


 高校生活に過大な期待をしていたわけじゃない。中学の時もずっと帰宅部だったし、高校に上がったからと言って何かやりたいことができたわけじゃない。ちびで体力もないから運動系は論外。文化系部活のおたくっぽさも肌に合わないし、芸術系はセンス皆無だ。なんと言っても人に合わせるってのが苦手中の苦手だから、部活は最初から問題外なんだ。

 じゃあ、学校から直帰して何かすることがある? ないんだよなあ。俺はゲームが嫌いなんだ。小中とゲーム機なしでずっと過ごしてきたし、高校に入ってからもゲームをしたいとは思わない。苦手だっていうならともかく嫌いだって言うと、クラスメートの十人が十人、揃って引く。だから俺にはこれといった友達がいない。つっぱってるわけでも、アウトロー気取ってるわけでもないんだけどな。


「ふう……」


 ただ、ゲーム抜きで何か俺と話をしようとしたら、とたんに話題がなくなるのは確かだ。部活やってないし、これと言ってオフに入れ込んでやってることもない。音楽とかマンガとかも嫌いじゃないけど、ものすごくこれが好きだっていう人や作品があるわけでもない。薄味の俺に何のネタを振ったらいいのかわからないっていう戸惑いはよーくわかる。だからと言って、俺から積極的に振れるネタもない。誰との接点も小さいから、ハブられてるわけではないのに俺はいつも一人だ。なんだかなあ。いや、周りの連中が、ではなく、俺自身がなんだかなあ、だ。

 高一の夏休み明けだから、高校生活はまだ序盤戦。何かきっかけがあれば、ミニブレイクくらいはするんじゃないかなと淡い期待は持ってるけど。何がブレイクのきっかけになるかなんて、想像もつかない。


 そんなんで、今日もうだうだ過ごしているうちにいつの間にか放課後。つまらんなあ。でも、つまらんのは俺のせいだよなあ、とか。ごちゃごちゃ考えながら国道横の歩道をふらふら歩いていたら。路側の植え込みの間にヘンな人が立っているのを見つけてしまった。


「あぶねーなー」


 道路の反対側に大きなスーパーがあって、道路ははみ禁。右折では入れないから、反対車線の車は俺の側にあるドラッグストアのパーキングに駐車し、徒歩で道路を横切ってスーパーに向かう人が多い。交通量半端ないから危ないと思うんだけどな。

 そういう光景を見慣れていたから、植え込みの間の人も同類なんだろうと思ったんだ。最初はね。でも、格好がどうにもヘンだ。


「うー、ここらでコスプレのイベントとかあったっけ?」


 背が低い男の子……いや子供だから男かどうかははっきりわかんないけど。雰囲気的には男の子っぽい。髪は緑。肌も緑、目も緑。徹底して、全身緑づくめだ。短い髪はあちこちつんつん跳ねてる。背丈から見て中一か中二くらいかなあ。小学生って感じではなさそう。ただ、コスチュームも含めて、徹底的に何かになりきってる感じ。その「なにか」っていうのがぱっと思い出せなくて、立ち止まってしまった。


「えーと。なんだっけかー」

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