(4)

「門番さんもエルフなの?」


 こんなずんぐりむっくりなエルフなんかいるもんかと思いながら、一応聞いてみる。案の定、バカにするなって顔できっちり否定した。


「おまえらみたいな阿呆と一緒にせんでくれ。俺は小人コボルトだ」


 コボルト? マザーが前にちらっとそういう種族もいるってことを言ってたような……。


「仲間はいないの?」

「俺には大事な役回りがあるんだよ。ここの門番は俺だ。俺一人で十分だし、俺一人でこなさなきゃなんねえ。そういう決まりなんだ」

「誰が決めたの?」

「さあな。とにかく、そういう決まりだ」

「じゃあ、チャムをここから連れてったのも、決まりだったわけ?」


 ぐっと詰まった門番が渋々しくじりを認めた。


「トウゴウされずに一部だけ向こうに行くってのはありえねえことなんだよ。どうしてそうなっちまったのかは、俺にもわからねえ」


 門番にしては随分いい加減で無責任だなあ。でもそんなことを言ったら、二度と僕に口を利いてくれない気がする。まだ欲しい情報はいっぱいあるんだ。とりあえず、質問を続けよう。


「チャムをこっちに戻せないの?」

「俺は門の開け閉めしかできねえのさ。それに俺が覚えてる限り、向こうに呼ばれたやつは誰一人戻って来てねえな」

「そんなあ……」


 つらっと答えた門番は、僕をじろじろ見ながら冷たく言い放った。


「まあ、諦めるんだな。ハグレにはお呼びがかからねえだろ。牧場でふらふらしてりゃいいや」


 牧場? エルフランドのことを牧場って言ったな。じゃあ、なにか? 僕らは飼い慣らされてるドウブツみたいなものか? そりゃあひどすぎないか?

 ものすごくアタマに来たけど、怒りよりもがっかりが先に立った。出入り口と門番は見つけたけど、欲しい情報が何ももらえない。いや、新しい疑問だけがいっぱい増えちゃった。

 門番は僕を無視しないし、他のエルフよりは事情を知ってるみたいだけど。それは門番としての知識だけ。肝心のチャムのことは何も知らないみたいだ。あのぺらぺらと模様もあっさり「わからん」て言って放り出しちゃったし。


 どうしよう……。


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