第二話 小さな世界
(1)
「ええと、まず」
箱柳の木から降りた僕は、これからどうすればいいのかをしばらく考えた。
さっき近くのホームツリーを見て歩いた時に思ったんだ。見渡す限り一面にホームツリーがあって、そこには多い少ないの差はあっても必ず僕みたいなエルフがたかってる。そして、うんと小さい木や枯れ木にはそもそも誰もいない。僕がいた箱柳みたいに、たかってるエルフが数えるほどしかいないっていう木は一本も見当たらなかったんだ。
だからまず、エルフが一人しかいないような寂しいホームツリーを探し出さないとならないんだろう。でもそんな木は、箱柳のすぐ近くにはなさそうだったんだ。そしたら、出来るだけここから遠いところまで、エルフ自体がうんと少ないところまで行ってみるしかない。ホームツリーの箱柳にしかいなかった僕にとって、遠くに行くとどうなるかなんて全く想像がつかなかった。でもこのぺらぺらのことを探るには、それしかないよね。
無数のエルフが集っているエルフランド。僕はそれがどういうところなのか全く知らなかったし、興味もなかった。でもエルフのいなさそうなところを探りに行くには、まず全体がどうなってるのか把握しないとなんない。
「それじゃあ、翔ぶかな」
箱柳の木から少し離れた草地に移動した僕は、そこから真っ直ぐ上に、どこまでも上に向かって翔んでみた。ホームツリーの枝葉とエルフたちのざわめきがどんどん小さくなり、僕の目にエルフランドの全貌が飛び込んできた。
「ふうん、こんなんなってたんだー」
果てが見えないほど広いのかと思っていたエルフランド。でも、思ったほど大きくなかったんだ。箱柳の木があった辺りは森の端っこ近く。森の中心には堂々とした大木が伸び伸びと枝葉を広げていて、そこが時々きらきらと輝いている。光を放っているのは大勢のエルフの羽なんだろう。
でも木がこんもり茂っているエリアはそれほど広くなくて、その外側には丈の高い葦が鬱蒼と生い茂っていた。葦原からはエルフの気配が全く感じられなかった。葦原の外側には曲がりくねった川が流れている。でも、どこかから流れてきてどこかに流れていくっていう動きが感じられない。ただ川があるっていうだけ。川はエルフランドの周りをぐるっと取り囲むようにして、まるで柵みたいに『外』とエルフランドとを切り分けていた。そして、外がどうなっているのかは僕には見えない。分からない。
「思ったより小さいんだなー」
僕は上空から見下ろした景色に強い違和感を感じた。思った以上にすごく狭いエルフランド。これだけ大勢のエルフが集まっているのに、チャムが消失したということを知っているのは多分僕だけだろう。そのことが……どうもおかしいんじゃないかと思えてきた。そして、僕のように高々と上空を飛行しているエルフは他に誰もいない。羽があるのに誰もまともに使ってない。さっきの川と同じで動きがないんだ。
「うーん……」
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