(2)
「退屈だあ」
ずっとチャムと一緒に居たから、僕は時の流れというものを意識したことがなかった。チャムをぽんと取り上げられると、途端に時間ていうのがずっしり重たく感じられるようになる。マザーは一人が全然苦にならないらしいけど、僕はマザーとは違う。一人はうんと退屈なんだ。
でも、箱柳の枝を降りて、他のエルフのところに行くのはめんどくさい。いや僕だけじゃなく、ほとんどのエルフはホームツリーから離れたがらないんだ。だから、エルフはやたらにいっぱいいるのに動きがない。そしてもちろん、僕もこの箱柳から離れたくない。ホームツリーに引っ付いているエルフの数は、ホームツリーの種類によって違っていて、菩提樹や桜の木には無数のエルフが集まってる。
僕とマザーがいる箱柳はまるっきり人気がなくて、チャムがいなくなったらマザーと二人だけだ。そして、マザーはいつも寝てばっかで僕をかまってくれない。僕は退屈で。退屈で退屈でしょうがない。
「どうしようかなあ」
退屈がいやなら、退屈でなくするしかないんだけどさ。ホームツリーを離れるのはしんどい。何もすることがない僕は、四つの変な模様のついたぺらぺらをじっと眺め回していた。
「捨てろ、かあ」
確かに、このぺらぺらがチャムの代わりに僕に何かをしてくれることなんかないわけで。マザーの言ってることは間違ってない。僕にとって何も意味がなければ、捨てるしかないんだよね。でも、意味があるのかないのかはまだ分からないんだ。僕の退屈を解消するには、このぺらぺらが何かを解き明かさないとならないんだろう。
僕はぺらぺらを筒のように丸めて小脇に抱え、思い切って地面に飛び降りた。
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